ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の人気が、思わぬところで社会問題となっています。2011年にHBOテレビで放送がスタートした同シリーズに登場するオオカミ「ダイアウルフ」に憧れた人々が、似ているという理由からハスキー犬を購入するも飼育できずに捨てるケースが増えているというのです。同シリーズでティリオン・ラニスターを演じるピーター・ディンクレイジが、「ダイアウルフに似ているという理由でハスキー犬を購入するのはやめて」と、ファンに呼び掛ける事態になっています。実際に撮影に使われているのはオオカミに似せて作出されたノーザン・イヌイット・ドッグという犬種ですが、この犬種はシベリアン・ハスキーと良く似ているため、欧米でここ数年ハスキー人気が高まっていると言われています。しかし、同時に残念ながら飼育できずに動物シェルターに持ち込まれるハスキー犬の数も年々増えてしまっているとのこと。

 ダイアウルフは、「ゲーム・オブ・スローンズ」シーズン1の冒頭で、死んだ母オオカミのそばで発見された6匹の子供。物語の中心となるスクーター家の6人の子供たちの元に引き取られるのですが、子供たちにとても忠実で、やがて成長してそれぞれの主人である子供たちを命がけで守る巨大な犬へと成長していきます。白や灰色の美しい毛並み、凛々しい顔、かっこいい外見で多くの視聴者を虜にし、実際に飼いたいと願うファンが後を絶たず、ハスキー人気に火が付いたと言われています。

 しかし、動物愛護団体によると、かわいかった子犬はあっという間に大きくなり、興味が失せて手に負えなくなった時、動物シェルターに持ち込まれるのだといいます。オオカミのような顔つきと瞳の美しさが魅力のハスキー犬は、家庭犬として元来人気がありますが、大きなものでは体重が30キロ近くなり、体長は50~60センチほどまで大きくなるため、狭いアパートなどでは飼育が難しいとされます。また、雪国の犬であるため、寒さには強い一方で暑さには弱いので夏場の温度管理も必要。さらに運動量が必要な犬種のため、長時間の散歩に連れて行かなければならないなど世話も必要で、誰でも気軽に飼えるわけではないと言われています。そんな状況に心を痛めるディンクレイジは、「どんな世話が必要か知らずに衝動買いするのはやめて。ハスキー犬を飼う代わりに、シェルターなどから他の種類の犬を引き取ってあげて」とコメント。動物愛護団体も、「どうか、どうか、もし犬を家族に迎え入れるなら、大きな責任への準備を持ち、保護施設から引き取ることを常に忘れないでください」とお願いしています。

 アメリカではこれまでも、101匹のダルメシアンが登場するディズニー映画「101匹のわんちゃん」やリース・ウィザースプーン主演の「キューティー・ブロンド」に登場するチワワなどが人気となり、その後同様に遺棄されるケースが相次いだと言われています。また、パリス・ヒルトンの影響でチワワが大ブームとなった際には年明けにクリスマスプレゼントとして贈られた犬が捨てられるケースが多発したとも言われています。セレブが小さな犬をアクセサリーのように扱うケースを問題視する声は以前からあり、「ハンドバッグ犬」などと呼ばれたりもします。命ある犬を飼うことは、ぬいぐるみやアクセサリーと持つこととは違い、家族の一員として愛情を注ぎ、一生面倒を見る覚悟と責任が必要だと再認識することが必要です。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)