昨年はセクハラ問題に揺れたハリウッドで、年明け早々今度は男女の賃金格差が問題になっています。2015年のアカデミー賞授賞式で女優パトリシア・アークエットが「俳優と平等な賃金を」と叫び、ハリウッドにおける男女の賃金格差が注目を浴びましたが、あれから3年たった現在も状況はまったく改善されていないどころか、悪化していることが明らかになりました。

 ケビン・スペイシーが少年にセクハラ行為を行ったことが原因で降板した映画「オール・ザ・マネー・イン・ザ・ワールド」の撮り直し分のギャラを巡って、主演俳優と女優の間に驚くべき賃金格差があったことが露呈し、大きな衝撃を与えています。メガホンをとったリドリー・スコット監督は、セクハラ行為が発覚した後すぐに撮影済みだったスペイシーの出演シーンをすべてカットし、代役を立てて再撮影をすることを決断。主演のマーク・ウォルバーグとミシェル・ウィリアムズの2人は、代役のクリストファー・プラマーと共に再撮影に参加しましたが、この際に支払われたウォルバーグのギャラがウィリアムズの1500倍だったとUSAトゥデイ紙が報じたのです。同紙によるとウィリアムズの日当は80ドルで、総額1000ドル以下だったことに対し、ウォルバーグは150万ドルを受け取ったといいます。1%にも満たない額に驚いた女優仲間は多かったようで、ジェシカ・チェステインは「ミシェルはオスカーにノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞を受賞している素晴らしい女優。共演男優の報酬の1%以上の価値はある」とツイッターに投稿。アークエットも「エージェントは自分たちのクライアントに十分な報酬が支払われないことに黙っていてはダメ」とコメントするなど、多くの女優が「受け入れられない」とギャラの低さに驚いています。

 そんな中、自身のギャラ問題が炎上したウォルバーグは、「平等な賃金実現のための闘いを100%支援している。だから(再撮影で受け取った)150万をミシェル・ウィリアムズの名前でセクハラ被害者を支援する基金『タイムズアップ』に全額寄付します」とSNSで声明を出し、これを機にセクハラ問題同様に男女の賃金格差の議論も活発化していきそうです。

 ちなみに今回の再撮影は、コスト削減のためにウィリアムズはほぼ無償のボランティアで参加していたとの報道もありますが、ウォルバーグは昨年発表された米経済誌フォーブスの「最も稼ぐ俳優」ランキングで6800万ドルを稼いで1位だっただけに、大きな論争に発展したといえます。昨年女優で1位だったエマ・ストーンとの差は2・6倍でしたが、今年はその差が少しでも縮まることが期待されています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)