1986年に公開されたトム・クルーズの出世作「トップガン」の36年ぶりとなる続編「トップガン マーヴェリック」が、いよいよ27日に日米同時公開されます。当初は2019年公開予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で幾度となく延期をくり返し、3年の月日を経てようやく劇場公開されることが決まったファン待望の新作です。

「トップガン」はカリフォルニア州サンディエゴにあるミラマー海軍航空基地にある通称トップガンと呼ばれるエリートパイロットを養成する訓練学校を舞台に、若き訓練生たちの挫折と栄光、そして恋愛を描いた作品で、クルーズがF14トムキャット戦闘機のパイロット、マーヴェリックを演じ、一躍スターダムへと押し上げた作品として知られています。

「トップガンマーヴェリック」の見どころを語るトム・クルーズ(撮影・横山健太)
「トップガンマーヴェリック」の見どころを語るトム・クルーズ(撮影・横山健太)

トップガンは、米海軍のパイロットの中でもわずか上位1%のエリート集団が集まる養成学校で、天才的だが、型破りで無鉄砲な操縦で知られるマーヴェリックは、ヴァル・キルマー演じる対照的に冷静なライバル、アイスマンから「無謀だ」と忠告を受けます。そんな中、マーヴェリックが操縦するトムキャットが操縦不能となる事故を起こし、相棒グースを失ってしまいます。

ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた「卒業白書」(83年)で脚光を浴びたクルーズが、「トップガン」で敏腕パイロットを演じた当時はまだ24歳でしたが、この7月には還暦を迎えます。続編でも自ら戦闘機に乗ってスタントなしの撮影をこなすなど20代の頃と変わらぬアクションを披露していますが、改めて「トップガン」の映像を振り返ると、若々しいクルーズの姿に驚かされます。

本作の大ヒットでスターの仲間入りを果たしたクルーズは、その後は「ミッション:インポッシブル」シリーズなどアクション大作からアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた「7月4日に生まれて」(89年)や「ザ・エージェント」(96年)、助演男優賞にノミネートされた「マグノリア」(99年)まで幅広い役柄を演じ、今もなおハリウッドのトップスターとして輝きを放っていますが、やはりその原点となる「トップガン」はクルーズを語る上では外すことができない作品です。

そんなクルーズは、新作では訓練生から今度は教官となってトップガンに帰ってきます。30年以上の時を経た現在も現役パイロットのマーヴェリックは、相変わらず型破りな性格で周囲をヒヤヒヤさせるも、訓練生の中にはかつての相棒で訓練中の事故で命を落としたグースの息子ルースターの姿もあり、父を失ったことで自分を恨むルースターと対峙するマーヴェリックの苦悩も描かれています。

本物のアクションにこだわるクルーズだけに、本作も米海軍全面協力のもと、CGは使わず全て実写で撮影が行われています。本物の戦闘機F/A-18スーパーホーネットに乗って撮影も行っており、空中戦などスリリングなアクションシーンは本作でも見所の一つになっています。そして何より、フライトジャケットにレイバンのサングラス「アビエーター」でカワサキのバイクに乗るマーヴェリックの姿を再び見られるのは、往年のファンにとってはたまらない瞬間でしょう。

コロナ禍での限定的な公開やストリーミング配信を断固拒否し、劇場公開にこだわり続けたクルーズの熱い思いが伝わる本作は、36年待った「トップガン」ファンのみならず、前作を知らない若い世代でも手に汗握る迫力の空中アクションに度肝を抜かされるはずです。「完璧な続編」と絶賛され、クルーズ作品史上最高の傑作ともいえる本作を見る前には、ぜひ「トップガン」を見ておさらいしておくとより楽しむことができると思います。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)