進学や就職で第1志望に入れず、第2志望の大学、会社に入ったという人は多いだろう。8月に東京・新橋演舞場のOSK日本歌劇団「レビュー夏の踊り『STARt』」(8月5~8日)で新トップスターとしてお披露目公演を行う楊琳(やんりん)も、同じような体験をしている。

横浜育ちの楊はテレビで宝塚歌劇の舞台を見て、華やかな宝塚にあこがれて中学3年の時に宝塚音楽学校を受験したが、不合格だった。高校では宝塚トップスターを何人も出している都内のアートスクールに通い、高校3年の春に受験したが、結果はまたも不合格だった。自信があっただけに、絶望したという。その時、アートスクールの先輩に「歌劇が諦められないなら、OSKもあるよ」と言われた。

楊にとって初めて聞く名前だったが、OSKは1922年に大阪で生まれた少女歌劇団で、OGには笠置シヅ子、京マチ子らがおり、アートスクールからも何人も入団していた。しかし、当時は親会社だった近鉄の支援がなくなり、03年に81年の歴史にいったん幕を下ろした後、松竹のバックアップもあって、04年に公演を再開したばかりだった。

劇団がこのまま存続できるか、将来的な不安はあったが、OSKの舞台を見て、自分の居場所はここにあると、気持ちを切り替えた。05年に研修所に入り、07年に「春の踊り」で初舞台を踏んだ。それから14年、一緒に9人が入所したが、今も劇団に残っているのは楊一人。しかし、後輩は約50人に増え、楊はその頂点に立つ。

先日、お披露目公演を前にした会見で楊は「OSKはう余曲折があって、波瀾(はらん)万丈な劇団ですが、逆境に負けない生命力がある。公演ではパワーと生きる力を見ていただきたいし、皆さんのパワースポットになればと思います。私も全身全霊、命をかけて頑張ります」と力を込めた。来年22年にはOSKも創立100周年を迎える。「100周年に在団できるのは奇跡。ただ、100周年がゴールじゃない。新たなスタートとして、それよりも先にバトンを引き継げるようにしたい。劇団も私も、より体力をつけていきたい」と100周年の先を見据えている。

第2志望だったけれど、そこでめげずに、原点だったレビューへのあこがれを糧に頑張り続けた楊。洋舞レビュー2幕構成の「夏の踊り」では全場面に出演し、定評のある踊りと歌でOSKトップとしてのプライドを見せてくれるだろう。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり『STARTt』」の制作会見に出席した、左から千咲えみ、楊琳、舞美りら
OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり『STARTt』」の制作会見に出席した、左から千咲えみ、楊琳、舞美りら