若手落語家の登竜門の「NHK新人落語大賞」本選が大阪で行われ、桂二葉(によう、35)が大賞を受賞した。

1972年に始まった前身の「新人落語コンクール」から数えて半世紀の歴史を持つが、女性落語家の大賞受賞は史上初めての快挙。女性落語家は70年代に登場し、初めて女性の真打ちが誕生した時は「女真打ち」と言われ、男性の真打ちとは一線を画した形だった。その後、そんな垣根は外され、現在では東西で女性落語家は約50人にまで増えている。

今回は107人の若手たちが挑んだ予選を経て、本選に出場したのは6人で、女性は二葉と林家つる子の2人。二葉は昨年出場した時に審査員の柳家権太楼から厳しい言葉の洗礼を受けたが、今回は権太楼を含め5人の審査員全員から10点満点を獲得。昨年のリベンジを果たしての栄冠だった。

まさにめでたい受賞だったけれど、主催したNHKには注文がある。この番組は11月23日に放送されたけれど、実は収録は11月1日だった。NHK側は出演者や審査員、公開収録の観客をはじめとした関係者に「結果は放送までは公にしないでほしい」という趣旨のことを伝えていたという。大賞受賞に喜び、その気持ちを多くの人にいち早く伝えたいであろう二葉の心情を忖度(そんたく)した出演者の1人が「どうにかならないか」と掛け合ったものの、NHK側の方針は変わらなかったとみられる。大賞受賞が公になるまでには、3週間後の放送を待つしかなかった。

昨年も11月2日に本選の収録が行われ、放送は11月23日だった。その時は笑福亭羽光が大賞を受賞したが、本選当日のネットニュースに結果が流れ、翌3日には新聞も報じるなど、放送前に大賞受賞者が公になってしまった。それに懲りたのか、今回の厳しい方針となったようだ。

ただ、この種のコンクールは生放送が原則だろうし、放送までの長い期間にわたって情報を解禁しないというのは不自然だろう。インターネットのなかった昔なら分かるけれど、SNSで瞬時に情報が拡散する現代にあって、歪(いびつ)すぎる印象も受ける。生放送が無理なら、本選当日に結果だけは発表した上で、「本選の模様は後日の放送でお楽しみください」でもいいのではないか。

本選で競った6人のレベルは高く、それぞれの高座を見るだけでも面白かった。受賞情報を公にできなかった時期、ある若手のツイッターに「今度、二葉さんに会うけれど、おめでとうが言えない」との言葉があった。あまりに寂しいつぶやきだった。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)