2023年度後期に放送されるNHK朝の連続テレビ小説が「ブギウギ」に決まった。歌って踊る「東京ブギウギ」「買物ブギー」の大ヒットで、「ブギの女王」として一世を風靡(ふうび)した戦後の大スター笠置シヅ子さんをモデルにしている。ドラマは、ヒロインの花田鈴子が道頓堀にできた歌劇団に入り、戦争や幾多の困難を乗り越えて、スターとなる姿を描くという。笠置さんは「大阪松竹少女歌劇団」(現在のOSK日本歌劇団)出身で、戦前はジャズ歌手として活動した。戦後、「ブギの女王」として売り出し、NHK紅白歌合戦にも4回出場しているが、1950年代後半には歌手を辞めて、その後は女優として活躍していた。

大阪制作の朝ドラは2017年の「わろてんか」で吉本興業の創業者である吉本せいさん、20年「おちょやん」では松竹新喜劇出身で「大阪のおかあさん」とも言われた女優浪花千栄子さんをモデルにしているが、実は笠置さんはせいさんとは深い因縁があり、千栄子さんともちょっとした関係がある。

せいさんには、23歳の若さで亡くなった穎右さんという息子がいたが、その恋人が笠置さんだった。息子を吉本の後継者にと望んでいたせいさんは、2人の結婚に反対した。病弱だった穎右さんは1947年に亡くなったが、笠置さんは愛する人の死の直後に女児を出産している。

千栄子さんとは同時代に大阪を中心に活躍していただけに、1952年公開の映画「銭なし平太捕物帳」などで共演している。また、千栄子さんの夫だった初代渋谷天外さんは新喜劇の女優と不倫。子供を身ごもっていたことから、千栄子さんは身を引く形で天外さんと別れている。その女優は新喜劇に入る前に「大阪松竹少女歌劇団」にいて、後輩にあたる笠置さんの面倒をいろいろと見ていたという。

ネットでは、誰がヒロインを演じるかで話題となっているようだが、笠置さんの波乱の半生は以前にもドラマや舞台にもなっている。朝ドラでも面白い作品になるだろう。【林尚之】