新年早々、初笑いできる作品だ。やっていることはばかばかしいけど、真剣。中年男2人の姿が切なく、おかしい。腹を抱えて笑うというよりも、笑いが込み上げてくる。

 千利休を生んだ大阪・堺が舞台。目利きだが不運続きの古物商・小池則夫(中井貴一)と、腕は立つが落ちぶれた陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)が一獲千金を狙ってタッグを組み、あこぎな鑑定士らに仕返しする人情コメディー。

 中井はコテコテの大阪のおっちゃん、佐々木はちょと渋めの大阪のオヤジ。共通しているのは人生に行き詰まっていること。そんな2人が「幻の利休の茶碗」作りに励みながら次第に心を通わしていく。偽物を必死につくる姿は、はたから見るとおかしく、なぜか応援したくなる。佐々木は役作りのために鎌倉の陶芸家に師事し、特訓を重ねた。

 笑いのプロが脇を固める。「あーりがーとさーん」の坂田利夫は表具屋よっちゃん、友近は佐輔の妻を演じる。「なんとしても手に入れたい欲に目がくらむ」。「人は見たいものを見てしまうねん」。中年男2人のセリフには懸命に生きてきた「真実」がつまっている。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)