怪作である。

舞台は第2次世界大戦の欧州戦線。ノルマンディー上陸作戦の直後、敵陣深くに米空挺(くうてい)部隊が降り立つ。連合軍の通信を妨害している教会の電波塔を破壊するのが任務だ。

序盤、空挺団を乗せた飛行部隊はすさまじい対空砲火にさらされる。主役の小隊を乗せた輸送機を敵弾が貫通し、周囲では友軍機が次々に墜落していく。炎のメラメラ感、きしめく機体…「プライベート・ライアン」の幕開けを空に移したようなリアルな描写だ。

命からがら降り立ったフランスの地方都市も、いかにも的な作りでナチス占領下の緊張感がきめ細かくまぶされている。戦争アドベンチャーの筋立てを予感させるが、任務完遂を目指す生き残り兵たちは、敵兵の動きや住民たちにしだいに違和感を感じ始める。

ジュリアス・エイヴァリー監督はこの「何かが変だ」の感じをほどよく配して後半につなぐ。

教会の地下ではナチスがとんでもない実験を実施しており、背景にはこの地域にしかない「秘密」があった。なんと後半はホラーで、緊張感はいつの間にか趣を変えていく。水と油を合わせた監督の豪腕に拍手。【相原斎】(このコラムの更新は毎週日曜日です)