「言うことは大きいが、気は小さい」「細かい」「若いヤツが売れるの嫌い。ひがみがきつい」「陰口はたたく」「他人を認めない」「大人になれない」

 ベテラン漫才師西川のりお師(66)の自己分析だ。どこまでが真実か検証する術はそうないが、確実に言えるのは、のりお師は「細かい」ことだ。

 先日、大阪市内で、来年1月25日に大阪・ビジネスパーク円形ホールからスタートするコンビ初の漫才全国ツアー「のりおよしお主義~漫才師の主張~」を発表した席上での発言が、この悪口のオンパレードだった。

 言いたい放題、毒舌で鳴らしたのりお師だが、実際、テレビで暴れた後、楽屋へ、おわびをして回っていた。こわもての顔、威圧感あるダミ声から、想像もつかない繊細なハートの持ち主だと思っていた。

 そして「細かさ」を実感したのは、もう15年以上前。ある日、「村上さん(記者)、きちょうめんですよね」と言われ、なぜそう思ったのか、理由を聞くと「いつも、メガネがきれいやから」と答えた。普段、メガネを着ている記者は、レンズの汚れが嫌いで、気づけばふき取っていた。きちょうめんを自覚することも多く、納得した。

 さらに、携帯電話のアドレス帳整理の細かさにも驚かされた。聞けば、自身の携帯に登録している相手方は、なるべくカメラで撮影させてもらい、電話帳に写真ごと登録。「これやったら、誰から電話がかかってきたが、すぐ分かるでしょ」と誇らしげに話していたことも思い出した。

 現在のように、スマートフォンが主流で、アドレス帳整理のアプリがあるわけでもなく、画面が大きいわけでもない「ガラケー」時代の話だ。もちろん、グループ分けも細かくされていた。

 神経質-。これが、記者ののりお師のイメージ。そして、もうひとつ。「おしゃべり好き」。舞台上では仕事としてしゃべり、さらに、舞台を下りても、ずっとしゃべっている。

 必然的に、のりお師の取材は長くなる。こちらも心得ているので、余裕を見て動いていたが、ある取材で、ふと時間を見れば1時間近くオーバー。次の予定があったので、ソワソワしていた。細かく鋭い観察力を持つのりお師だけに、感づかないはずがない。だが、そこは、のりお師のいたずら心だったのか、会話が切れそうになると、次の話題を出し、それがまたおもしろく、時が過ぎていった。

 もう限界-。直接的に切り出した。そして「すいません、次、きよしさんの取材で…」。そう、次の予定は、のりおの師匠、西川きよしさんの取材だった。

 いたずら心で会話を延ばした結果、自身の師匠へしわ寄せが…。あの後の、のりお師の慌てぶりは、今も鮮明に覚えている。

【村上久美子】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)