抜群な透明感の一方で、どこか古風な雰囲気も感じさせる。女優白石聖(22)。公開中の映画「胸が鳴るのは君のせい」(高橋洋人監督)で、初の恋愛青春映画のヒロイン・篠原つかさを好演している。「ずっと新人のままではいられない」。新しい一面を開花させ、また1段、階段を上った。

★「私、打たれ弱いので」

本当にこれが、初ヒロインか-。原作は、12~14年まで漫画誌「ベツコミ」で連載され、累計発行部数250万部突破の大ヒット少女コミック。これまでの出演作では、何か問題を抱える役が多かった白石だが、“THE青春”ともいえる映画のヒロインでも、全く違和感がない。

「これまでは、天真らんまんな役というより、何かを抱えている役が多かったです。なので、つかさという少女漫画のヒロインで、お声掛けいただけたというのが、すごくうれしかったです。恋愛青春モノのヒロインは初めてだったので、頑張ろうというか、キラキラとした世界観に入れるのが、すごく楽しみになりました。これからは、こういった役も増えていったらいいなと思いますね(笑い)」

つかさは、ジャニーズJr内ユニット「美 少年」の浮所飛貴(19)演じる主人公・有馬隼人に思いを寄せ、告白する。失敗に終わるも、ひそかに思い続けるいちずな性格。自ら学級委員を引き受けるなど、誰にでも好かれる役どころだ。

「つかさは、すごく真っすぐで親近感がわく、本当に等身大の女の子です。原作の中では、有馬にもう1度告白しに行くシーンがすごく好きです。そこがいとおしいというか、つかさに“胸キュン”じゃないけど、心を揺さぶられます。でも私だったら、告白して振られちゃったら、そこでもう諦めちゃう。打たれ弱いので(笑い)。つかさの強さは、本当にすごい。誰かを真っすぐ思い続けることが素晴らしいと思うので、すごく好きです」

つかさと似ている部分は「おおざっぱなところ」。だが、白石は常に落ち着いていて、質問1つ1つに、頭で整理してからしっかりと回答する一面も。それは、現代に欠かせないSNSにも共通していた。ツイッターに次ぎ、4月にはインスタグラムを開設した。

★SNSは不可欠な感じ

「自分の言葉で発信することも、絶対大事だと思います。でも、ツイート1つ作るのに、15分くらいかかっちゃうんですよ。ツイッターは文字の世界で、ニュースを見ていても、すごくダイレクトに伝わり過ぎてしまう。気を配るというか、『何か誤解がないように』と思うと、文章ってすごく難しいなって思ったんです。でも今の世の中は、SNSは不可欠な感じではあると思います。そう考えた時に、インスタは写真と一緒なので、もうちょっとラフな感じで投稿できる。逃げ場じゃないけど、気楽に、息抜きできる感じで伝えていけたらと思います」

つかさが思いを寄せる有馬は、イケメンだが愛想が悪く、少し怖がられる人物。白石は、どんな男性がタイプなのか。

「自分とテンション感の合う人が良いです(笑い)。話している時に、自分があまり変に頑張らなくてもいい人とか。一緒にいて落ち着ける人とかだと、自然でいられます。お話もしやすかったりすると、その会話自体がすごく楽しいなと思います」

映画は高校が舞台。文化祭や夏祭りなど、学生時代の青春を感じられるシーンが多数ある。白石は「普通の高校生」だったという。

「ファミリーレストランのホールでバイトしていたり、部活にも入っていたけどすぐに辞めちゃったり、本当にどこにでもいるような高校生でした。花火大会や、夏祭りに行ったり、この映画で『こういうところに、みんなで遊びに行ったなー』とか、思い出しました。一番の思い出は、よく制服ディズニーをしていました! バイトのお給料は、月に1回くらいディズニーに行くために使っていた感じです(笑い)」

そんな普通の高校生活が、一転したのは高校2年の夏。「ベタ」だと笑うように、原宿の竹下通りでスカウトされた。声優業に興味を持っていたため、芸能界入りした。

「古着が好きで結構1人で買い物に行くんですけど、(スカウトされた日は)なぜかあまり行ったことがなかった原宿に行ったんです。今思うと、ちょっと謎なんですけど、何かに呼ばれていた気がします」

★役を演じ、役を生きる

女優業の傍ら、19年には結婚情報誌「ゼクシィ」の12代目CMガールなど、多方面で活躍。ターニングポイントは、19年のフジテレビ系連続ドラマ「絶対正義」。同作で共演した、桜井ユキ(34)に感銘を受けたという。

「お芝居で働くというのはこういうことだと、教えていただけた作品です。桜井さんとはすぐ後に、別の作品でも共演させていただきました。その時に、本当に別人のようにガラッと変わっていて、当たり前だけど、役を演じる、役を生きるとは、こういうことなんだなと。映像を見ていても、役として描かれていないけど、『昨日もちゃんと生きていた』っていう感じがすごいんです。1つのシーンだけを切り取っているのではなく、今までちゃんと、この人でずっと生きてきたからこそ出る深みというか。そういうのを桜井さんから感じることが多くて、素晴らしいなと思いました。なので、桜井さんが出ているドラマは、見ちゃいますね(笑い)」

順調にキャリアを積んできた印象だが、まだ、自分の強みが発見できていないという。

「ここ最近、いろんなテイストの作品に携わらせていただきました。でも、『強みは何ですか?』という質問の答えが、自分では分からないんです。だから、自分の強みを見つけることが目標というか。そうすると、そこが自信につながって、視聴者の方への伝わり方、見え方に厚みが出ると思います。いずれは、声優さんのお仕事もできたらと思いますけど、桜井さんみたいに、ちゃんとその役を生きているように見えるお芝居ができたら、すてきだなと思います」

今年の春、同級生の多くが社会人の1歩を踏み出した。“先輩”の白石も、改めて思うことがあった。

「今まで連絡を結構取っていた仲のいい友達も、新人研修とかで忙しく、返信がなかったり…。私ももし、このお仕事をしていなくて、大学に通っていたとしたら、同じような面持ちでいるのかなって思いました。『ずっと新人のままではいられない、ちゃんとしなきゃ』と改めて、気を引き締めました」

6年目の白石聖が、再びアクセルを踏み込んだ。【佐藤勝亮】

▼映画「胸が鳴るのは君のせい」高橋洋人監督(42)

白石さんの持つ透明感が少女のようなつかさの表情にとてもマッチしていて、印象的でかわいらしいいちずに恋する高校生・篠原つかさが誕生したと思います。常に落ち着いた方ですが、平然とコミカルなお芝居をされるのでそのギャップに驚かされました。つかさの滑稽な部分を完璧に体現しています。しっかりと意思を持ち真面目に面白いことを考えている、どんな役にでも染まることのできる役者さんだと思います。

◆白石聖(しらいし・せい)

1998年(平10)8月10日、神奈川県生まれ。16年にデビューし、20年にフジテレビ系「恐怖新聞」で連続ドラマ初主演。日本テレビ系連続ドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」など、人気ドラマに多数出演。7月スタートのフジテレビ系ドラマ「推しの王子様」(木曜午後10時)にも出演する。趣味はイラストを描くこと、特技は書道。158センチ。血液型A。

◆映画「胸が鳴るのは君のせい」

普段はクールでひょうひょうとしている、主人公・有馬隼人(浮所)に、白石演じる篠原つかさが思いを寄せ、告白する。失敗に終わるも、その後、諦めることなく思い続ける姿を追う“胸キュン”ラブストーリー。

(2021年6月13日本紙掲載)

特技の書道で色紙に名前を記す白石聖(撮影・菅敏)
特技の書道で色紙に名前を記す白石聖(撮影・菅敏)
特技の書道で色紙に名前を記した白石聖(撮影・菅敏)
特技の書道で色紙に名前を記した白石聖(撮影・菅敏)