勢いがすごい。お笑いコンビ、千鳥のノブ(42)と大悟(42)は、テレビで見ない日がない人気者になっても、謙虚な姿勢は崩さない。独特の漫才ネタを武器に関西で地位を築き、満を持して上京。苦しんだ時期もあったが徐々にキャラクターを定着させ、約10年たった今ではコンビだけで番組レギュラー10本、CM契約は4社を数える。2人が感じるここまでの歩みと今後について、その胸中を聞いた。【松尾幸之介】

★楽しいだけじゃだめだな

培った経験が財産になっている。言うなれば今は充実期。ノブは仕事が少なかった時期にも触れつつ「本当にありがたいこと。幸せでしかないです」と感謝を口にする。大悟も「昔はもっと仕事を増やさないととか、こんなお笑い番組をやらないとだめだとかいろいろ考えていたので、しんどい時期もありました」と振り返り「今はそういうのが実現して楽しいです。でも、若手の突き上げもありますし、楽しいだけじゃだめだなとも思っています」と気を引き締めた。

12年から2年連続でTHE MANZAI準優勝を果たして注目を集め、13年には上方漫才大賞も受賞。同時期に上京した。お笑いライブへの出演のほか、コンビのレギュラー番組は全国ネット、地方ローカル、ウェブ配信を合わせて10本。ピンのものも含めるともっと多いが、うまく休日も設けながら落ち着いて仕事に向き合う日々を送る。

ノブ 3、4年前は全部の仕事を受けて、本当に休みがない時期もありました。今はあんまり無理しないでおこうという感じ。ゴルフという趣味もできて、休みの日は毎日練習やラウンドに行っています。なので、足腰にはきていますね。

大悟 僕も今が一番ちょうど良くて、いいかなというくらい。朝早くからのロケとかが減った分、酒の量が逆に増えたような。だから、ゴルフでも始めようかなと思います(笑い)。

ノブ あんまりないねん。(コンビでゴルフするのは)タカトシぐらいや。

大悟 次の日にゴルフがあると前日に早く帰るとか聞くので。ノブが車持っていますし。

ノブ 何で迎えに行かなあかんねん。酒でベロベロのお前を。

★ロケから感じが出だした

2人は岡山県の高校の同級生。「~じゃ」などが特徴の岡山弁も飛び出す漫才で、ボケの大悟に鋭いツッコミを入れるノブ。独特の雰囲気の面白さで人気を得た。関西でも多くのレギュラーを抱えていたが、上京当初は苦しさも味わった。フジテレビ系バラエティー「ピカルの定理」などに出演するも短命に終わり、レギュラーが1本のみの時期も。それでも地道に番組ロケなどで存在感を発揮し、東京でも仕事が増えるようになった。

大悟 2人の感じが出だしたのはロケとかからですね。こういう人間なんだというのが出始めました。

ノブ 組み手みたいにずっと毎日ロケをやっていたので。徐々に受け入れてもらえたみたいな。笑神様とかで(大悟が)海に落ち始めたりとかを経てですね。最初、海に落ちたときは引かれてますからね。そこから名物になったりしました。

東京でも魅力が認知されると、2人でMCを務める番組が急速に増加。18年に始まった朝日放送系「相席食堂」(火曜午後11時17分)やテレビ埼玉「いろはに千鳥」(火曜午後11時)はローカル番組ながら高い人気を誇る。TVerなどでも視聴でき、幅広い世代に見られるようになった。

ノブ 「相席食堂」は大阪の番組なんですけど、東京でも見てくれる人が多かったりして。そのせいか、最近、何かを見て2人で文句を言う仕事が多いんですよ(笑い)。VTRを見て突っ込む仕事。自分らの番組を見ていたら嫌なことしか言ってない。ちょっと考え物だなと思いました(笑い)。もっとプレーヤーとしての部分も押し出していきたいなと思いますね。

★お笑いフェスのけん引役

所属の吉本興業内での立ち位置も変わり、8月から同社が12年ぶりに開催する日本最大級のお笑いフェス「LIVE STAND 22-23」では、中川家やタカアンドトシ、博多華丸・大吉、海原やすよ・ともこ、かまいたちと共にイベントを盛り上げる6組のライブスタンジャーにも任命された。東京、大阪、福岡の各公演で、若手からベテランまでのべ1000組を超える吉本芸人が出演するビッグイベントのけん引役を務める。

ノブ 12年前は自分らのコーナーとかもなく、主な出番はネタ披露の10分とかでした。お客さんも1万人ぐらい入っている中、ややウケだったんですよ。それを次の出番の陣内(智則)さんに見られてめっちゃ笑われて。『兄さんすみません』って言いながら陣内さんが出て行って、死ぬほどスベっていたんですよね。誰よりも(笑い)。あの2連チャンはいまだに陣内さんと話すんですけど。大きいところでスベるとダメージがでかいですねやっぱり。

大悟 前回は今みたいな立ち位置ではないので、空き時間が多くて。食事スペースとかで芸人みんなと遊びながら、出番がきたら飛び込んでやっていたのが12年前。そこでややウケという結果になりました。今回、そういうやつらがいたらちゃんと言って回ろうかなと思っています。芸人がたくさん集まって楽しくなっちゃって。それじゃいけんぞっていうのを。

ノブ 何でそんな風紀委員みたいなことするねん。楽しくないのよ、お前みたいな先輩がいたら。

大悟 特に若手は緩んじゃうから。

ノブ ええねんて緩んだくらいで。LIVE STANDは。とにかく生ならではのネタや臨場感、ライブでしかできないコーナーもあるので、楽しんでもらえたらなと思います。

第一線で走り続ける中で、後輩らへの思いも強く芽生え始めている。そんな2人が目指す将来の方向性も聞いた。

ノブ サンドウィッチマンぐらい好かれたいですね。彼らに何のランキング見ても負けているので。あんなに私服が変な2人なのに、めちゃくちゃ人気あるんですよ。あんなにジーパンに刺しゅうある人、あんまり人気出ないはずなんですけど、2人とも。

大悟 あんまり言ってなかったですけど、ダウンタウンみたいになりたいですよね。

ノブ 1年目のやつが言うことや。恥ずかしい。

大悟 いやいや、もともとダウンタウンになりたくてって考えたら、12、13歳の時とあまり変わってないなと思います。今は2人の番組もあり、お笑いの何かをしているものもあり、バランスも少し似ているかもしれない。あとはノブにドラマとかに出てもらって。そこだけが足りてない。

ノブ それ浜田さんや。しかも、もうドラマ出てん。朝ドラも月9も出ましたからね実は。もちろん大悟に下手や下手やっていじられて、それが企画になったりして。余計に(オファー)こなくなりました。朝ドラは確かにちょっと下手でしたし、月9も下手でしたけど、(ピースの)綾部主演の昼ドラはめっちゃいい演技でしたよ。あんまり見られてなかったですけど。

大悟 (ダウンタウンとは)吉本を盛り上げていこうみたいな話をすることはあります。もう僕がつくるしかないですね、ノブ主演のドラマを。共演は(ダイアンの)津田とか。

ノブ めちゃくちゃ吉本製作やないか。

クセはすごくない。純粋な仲の良さと、飾らない人柄が魅力のひとつだと感じた。今後も自然体のまま、千鳥は変わらぬ活躍を目指す。

※この取材は千鳥・ノブの休養発表前に行いました。

▼千鳥と親交の深い後輩芸人ネゴシックス(44)

大阪時代、毎日一緒に過ごした1個上の千鳥さん。仲良くなるため、出番じゃない日に劇場の楽屋で待ち伏せた。島根出身の僕は岡山出身の2人に親近感。それだけで仲良くなりたかったわけではなく、初めて見る岡山弁漫才と聞いたことのないテーマのネタにひかれた。熊の倒し方、夜寝れない話、変な名前の友達…。誰も手をつけてないテーマのネタ群。山奥から持って来た泥付きの様な素材。オーガニック漫才なのか!? 飲食店ならだいぶクセすご店だ!

◆千鳥

大悟(だいご)1980年(昭55)3月25日生まれ、岡山県笠岡市出身。ノブ、1979年(昭54)12月30日生まれ、岡山県井原市出身。2000年結成。M-1グランプリには01年から10度出場し、05年の決勝6位が最高。漫才中の大悟に対するノブの「クセがすごい」のツッコミが人気フレーズ。日本テレビ系「千鳥かまいたちアワー」、フジテレビ系「千鳥のクセがスゴいネタGP」などレギュラー番組多数。