雪組公演「凱旋門」新人公演主演には、4年目に入ったばかりの縣千(あがた・せん)が抜てきされた。兵庫・宝塚大劇場は今月26日、東京宝塚劇場は8月9日。

 まだ4年目。雪組「凱旋門」新人公演で初主演する縣千は、先輩やファンから「あがた色」と呼ばれる個性を、すでに発揮している。若さと躍動感、色気を含んだまなざし。素質は十分だ。

 「まず、轟(悠)さんから何が学べるか。役を通して、轟さんの渋さ、格好良さをどう出せるか…」

 本公演の主演は、劇団理事で専科から出演している男役の体現者・轟悠。新人にとっては、超難役だが、抜てきには理由がある。

 「以前(雪組トップ)望海(風斗)さんから『役はそのときの自分に必要なものがくる。運命的なんだよ』と言っていただいて。今回も、今の自分に必要な役なのだと思います」

 組配属されて最初の本公演は「星逢一夜」。その次の全国ツアーで、若手スター永久輝せあと一緒に踊る場面を得た。抜てきにも地に足を着けて、着実に階段を上る。趣味も、特技もダンス。ただ今回は、祖国を追われた亡命者の役。踊りに頼らない心情表現が肝だ。「物事を人に伝えるのが苦手…。ダンスなら表現できるんですけど」と笑った。それが「あがた色」か。

 「何色なんでしょう(笑い)。正統派でもいたいし、おちゃらけたこともやりたい」。しっかりと己を保ち、つきつめるタイプだ。

 「子供の頃から興味を持つと、とことんいっていました。石ころ集めが好きで、そこから発展して、鉱物まで。鍾乳洞にも行って」

 ピアノは習わずに、宝塚音楽学校を受験し、合格。ピアノの試験に苦しんだ。

 「毎日2時間はピアノをやるって決めて、やりました。毎日練習していたら好きになり、成績も上がった。チャレンジすることは大好きです。適当に流すのは、モヤモヤしちゃう」

 いちずで一本気。中学時代、宝塚大劇場で初観劇し、ファンになった。その帰り、雑誌を劇場売店で購入。その1冊の本を“バイブル”に受験に向かった。

 「その雑誌は大劇場でしか売ってないものだと思って(笑い)。何年もその同じ雑誌を見ていました」

 受験は1度だけと決め、一発合格した。「緊張するタイプですが、予習しすぎてもダメなので、加減が難しい。煮つまってきたら朝から寮のリラックス室で踊る。ストレス発散になります」。自分を見失わない。大器の素質十分な新星だ。

 ◆ミュージカル・プレイ「凱旋門」-エリッヒ・マリア・レマルクの小説による- 第2次世界大戦前夜のパリが舞台。祖国を追われた亡命者たちを描く。ドイツから亡命してきた外科医ラヴィックは、人生を達観。友人ボリスの助けを得て、敵(かたき)を捜すうち、生きる希望となるジョアンと出会い恋に落ちる。

 ☆縣千(あがた・せん)2月10日、京都府宇治市生まれ。15年入団。雪組配属。組配属直後の「星逢一夜」新人公演で永久輝せあ、次作以降は「るろうに剣心」で月城かなと、「私立探偵ケイレブ・ハント」で彩風咲奈、「幕末太陽傳」で望海風斗が本役のキャストに入る。身長171センチ。愛称「ちさと」「あがた」。