ドラマ「波よ聞いてくれ」、9日で終わったばかりだが今クールで一番楽しませてもらった。主人公・ミナレがふとしたきっかけでラジオパーソナリティーに抜てきされ、その破天荒な言動と行動をもって、リスナーの悩みに応えていく。毎回ドラマ終盤にキレキレのマシンガントークでまわりをねじ伏せるその様は、スカッとしたい金曜日の夜にもってこいの作品であった。

主人公のキャラクター、どこかでと思ったが、それは最近配信で何度目かのブームになっている伝説的なドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主人公のマコト。「めんどくせぇ!」と発しながら、トラブルシューターとして数々の事件を解決していく。共通していえるのは、がさつで型破りな性格ながらどこか憎めなくて人懐っこい。時代も性別も違うが普遍的に魅力的な主人公像なのだとどこか納得。

そこで意外な共通点をひとつ。どちらも原作ものだが、主人公のキャラが違うところ。「波よ聞いてくれ」では、小芝風花演じるミナレはやさぐれた感じは同じだが見た目が違う。漫画やアニメでは長身でさっぱり系の顔立ち、少し大人っぽい印象も受ける。まくし立てる感じも微妙に違い、見た目だけなら麻生久美子、雰囲気でいえば江口のりこといったところだろうか。

「池袋ウエストゲートパーク」は、長瀬智也演じたマコトが小説ではそこまで荒々しくなく、かなり知的なイメージで後から小説を読んだ時にびっくりした。どちらも原作ファンからしたらミスキャストに感じるかもしれないが、なかなかはまり役だと言える。原作からのこのキャスティング、改めてすごいなと感心する。

さてそこで今回紹介したいのは「波よ聞いてくれ」で主役・鼓田ミナレを演じる小芝風花、大阪出身の26歳。2014年の初主演映画「魔女の宅急便」で数々の新人賞を獲得、その後も順調に活躍を続け、2018年のNHKドラマ「トクサツガガガ」で初主演。それまで清純派なイメージだったが、この作品でコメディエンヌとしての才能を開花。同年代の女優に比べ、その確かな演技力でドラマ「妖怪シェアハウス」など、通常のドラマに比べ難しい役どころもなんなくとこなす。

そこで今回の作品、金髪にラフな風貌でやさぐれた感じがとにかくいい。「魔女の宅急便」で彼女を初めて観た世代としてはどこか感慨深いものもあるが、早口でまくしたてる姿は爽快そのもの。元から持っている天真らんまんな部分と、ここ数年で蓄積された演技力がうまくかみ合った印象を受けた。ここまで演じる幅が広ければ今後重宝されるに違いない。

すでに、次の作品が発表されているが、今後どんな役をやってくれるのか今から楽しみである。小芝風花、注目の女優さんです。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新映画「追想ジャーニー」が公開、今年3月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」も上演した。