ドラマ「離婚しない男 -サレ夫と悪嫁の騙し愛-」が面白い。過激な演出がネットを中心に話題を生み配信での再生回数を伸ばしているが、内容自体も新しい。妻の不倫物語と思いきや、その裏で親権を取ろうとする旦那の物語がメインである。

「父親の親権の獲得率はわずか1割」。妻が不倫をしていても養育実績のない旦那が親権を得ることはほとんどないという。養育実績を重ねるため主夫になり、妻の不倫の決定的な証拠を集める模様が何ともおかしい。

原作は漫画だが、原作以上にコミカルに演出されている点もポイントが高い。脚本を担当する鈴木おさむのテイストもうまくマッチし、相乗効果が生み出されている。すでに脚本業から引退を宣言しているが、最後にふさわしい作品になりつつある。

そこで今回紹介したいのは不倫妻役で出演している篠田麻里子。不倫相手の小池徹平と地上波で大丈夫?と思わせるほどの激しいシーンを毎回に渡りこれでもかと演じる。その体当たり演技自体もだが、自身でも1年ほど前に不倫騒動を起こしていた。その上でのこの役、キャスティングした側もだが、受けた事務所や本人も相当な覚悟をもっていたに違いない。これまでもアイドル出身の女優としては悪女的な役が多い印象ではあったが、さらに振り切った役で女優としてブレイクするのではないかと思う。

新しいテーマに、なんとも旬なキャスティング、そして過剰な演出ときたら話題になるのもわかる気がする。海外プラットフォームの配信ドラマもよいが、こういった気概のある作品も出てきており、まだまだ日本のドラマも捨てたもんじゃないと思う。彼女のこれからと、ドラマの展開に大いに期待したい。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。直近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」が公開。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)