ドラマ「不適切にもほどがある」(略称:ふてほど)ロスである。よくあるタイムスリップものと思いきや、あっといわせる仕掛けがいくつもあり、さすが宮藤官九郎といったとろこだろうか。「(日本のエンタメ業界は)韓国に20年ぐらい差をあけられた」との発言が話題になっていたが、世界に向けてではないが日本にもまだまだ面白いコンテンツがあることを示したのではないかと思う。

さてそこで今回紹介したいのは、「不適切にもほどがある」に出演していた山本耕史。仲里依紗の先輩プロデューサー役、本人役で登場した八嶋智人との息のあったやりとりは見事の一言だった。同じく宮藤脚本(大石静とタッグ)のNetflix「離婚しようよ」や、昨年夏クールのドラマ「ハヤブサ消防団」でもクセのある役を魅力的に演じていてどちらも印象に残った。抜群の安定感から、キャスティングしておけばドラマ自体のクオリティをアップさせるのは間違いないだろう。

改めて山本耕史、0歳から乳児モデルとして活動し子役を経験。16歳の時に大ヒットドラマ「一つ屋根の下」で4男・文也を演じ一気に知名度を上げる。その後コンスタントに活動し、2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」では土方歳三を演じブレイク。翌年には、「第56回NHK紅白歌合戦」の白組司会に抜擢される。その後はミュージカルを中心に映像作品にも多数出演。堀北真希との結婚でも話題になるなど、ずっと一線で活躍する俳優である。

そこで前述したドラマ3本、これまでの雰囲気よりさらにリラックス出来ていて、より熟成された山本耕史が楽しめる。メインでも脇でもゲストでも、コメディでもシリアスでも何でもこいといったかんじだ。

恒例のサッカーに例えると、怪我が完治し、パスにドリブル、シュートとすべてが高水準で円熟味が増しているデ・ブライネが頭によぎる。レジェンドクラスまであともう一息、今観るべきサッカー選手の1人である。

そして、今クールではドラマ「花咲舞が黙ってない」で今田美桜の相方として登場する。前作の杏、上川隆也のコンビを超えることができるのだろうか。今田美桜は山本にとってのハーランドになれるのだろうか、今後の活躍に大いに期待する。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。直近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」が公開。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)