ドラマ「海のはじまり」が面白い。ドラマ「silent」のチームが再集結して描く、親と子のつながりの物語。目黒蓮に有村架純と月9にふさわしい2人に加え、池松壮亮、大竹しのぶとテレビではなかなか見られない名優たちも名を連ねる。展開が早いドラマが多い中、ゆっくりと、じっくりと進む物語がなんとも心地よく、週明けからどこか幸せな気分になる。
脚本を担当するのは生方美久氏。看護師などを経験した後、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞。その後いきなり「silent」で抜てきされ、続いてのドラマ「いちばんすきな花」でも高い評価を得る。まだ31歳、今後もっとも活躍が期待される脚本家といっても良いだろう。彼女の描く優しい世界がこれからも楽しみである。
いい脚本。恒例のサッカーに例えると、横パスと縦パス、そしてスルーパスのバランスがいいものを指す(と考える)。横パスは何げないセリフ、縦パスは物語を進行させるセリフ、スルーパスは物語の核となるセリフと定義してみる。適度な横パスの中に縦パス、そしてスルーパスがあることにより、攻撃に厚みが出て作品が面白くなる。横パスだけでは退屈になり、縦パスだけでは視聴者がついてこれない、そしてスルーパスだらけだとすぐに見透かされてしまう。強豪チームの攻撃はこのバランスがとにかくいい。
例えば1話の葬式後のシーン。同級生の「(亡くなった)南雲さん、1人で生きてけそうな感じあったし…」に対し、目黒演じる夏が「生きれなかったから今葬式してるんだろ」と切り返すセリフがある。まさにスルーパス、ぱっと見そこまで主張がない人物に見えたが、この一言でこの物語のその後の展開や、彼の本質的な性格を示唆していることになり、がぜん作品に興味が沸いた。このようなパスが全体を通してちりばめられている。
さて最後になったが今回紹介したいのは目黒の娘を演じる子役、泉谷星奈(いずたにらな)。現在7歳だが、ドラマ出演のキャリアはすでに20本を越え人気子役の1人。母親がいなくなる難しい設定だが、その愛くるしい表情やしぐさに癒やされている大人たちも多いはず。そうそうたるメンツの中、ひょうひょうと演じるその姿はすでに大物感も漂う。
そして最新話では、これまでになかった表情を魅せる。撮影の中で成長したのか、演出なのかはわからないが、とにかくあの表情の進化はすごい。子役の枠をとっくに出て、大人の俳優として認識させられた瞬間であった。いよいよ最終章、どのようにして終わるのかとともに、彼女の明るい未来に期待です。
◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。最近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」、10月18日には映画「追想ジャーニー リエナクト」が公開予定。





