NHK大河ドラマ「西郷どん」の薩摩弁が分かりにくいとネット上で話題になっていることについて、NHKの定例会見のコメントです。寄せられた感想は約400件あったとし、薩摩弁に関する内訳は「集計していない」としました。

 ぶっちゃけ、私も薩摩弁過多の作風に耳が慣れず途方に暮れている1人なので、「一部」とはいえ同じような苦戦派がいることが分かって救われました。70年代後半から大河を見てきて、「作風が好みじゃない」「絶望的に主人公に興味がない」「主演俳優が嫌い」などの理由で脱落することはありましたが、「言葉が難しい」というハードルを感じるのは初めて。ストーリー的には子役時代からダイナミックで広々とした物語が展開しているだけに、お国言葉のスパルタになじめず涙目です。

 きのう放送された2話から主演鈴木亮平さんの登場。やんちゃな子がわいわいいる子供時代を抜けて、青春編は聞き取りやすくなるかと注目していましたが、薩摩弁のトーンはいよいよ増したような…。表情や前後の文脈であらかたの意味は分かるのですが、聞き取れない部分があるたびに疎外感が増すんですよね。字幕モードに切り替えてもみましたが、表示されているのは薩摩弁。洋画を英語字幕で見ているようなややこしさがありました。

 ネット上は2話もなかなかの大騒ぎ。「字幕モードで固定した」「BSでは地震速報も出て画面が文字だらけ」「酔っているシーンの薩摩弁は外国語」「副音声は標準語にしてほしい」など、みんな苦労しているようです。逆に、薩摩弁ネイティブの人たちは「マイルドすぎ」「県外の人はこの程度で分からないの」ときょとん。どちらにも波紋を呼んでいて面白いですね。

 台本はどんな感じなのか見てみると、あちこちにルビが振られていて驚かされます。意味が分からなければ俳優も感情を込められないため「おやっとさ!(お疲れさま)」「ないたかでごわす(なりたいです)」「数匹のだんま(川エビ)」「やっせんど(いかんぞ)」などと標準語が併記。脚本家と俳優陣の苦労がしのばれます。

 読んでいると、ちょっとした規則性にも気付きます。「連れっ行かれ」「飲ませっもろうて」「家のこっも考えて」「逃ぐっど」など、音節が脱落して促音(『っ』と詰まる音)になる独特のアクセントがあって、耳が慣れない人にはつまずきポイントかもしれません。大勢でわいわい盛り上がっている場面は特に手ごわく、「ないをー」「あいたっほんのこて来おった」「腹が減っだけじゃ鰻取りで決着をつくっど」「おっどおっど」「食ったらひったまがっど」と、文字で追っても難易度MAX。勉強家の鈴木亮平さんが生き生きとした薩摩弁を披露するほど、こちらはどんどん分からなくなるというループに陥っています。

 私にとって大河ドラマは、作家の世界観でぐいぐい見せる究極のエンターテインメント。物語が面白ければ時代考証もことば考証も二の次で良い派なので、「どん」「もす」「ごわす」あたりで雰囲気を感じさせてくれれば十分。受け手の好みにもよりますが「篤姫」(08年)の薩摩弁あたりがちょうど良かったと懐かしさも感じます。

 周囲の「問題なく聞き取れる」派からは「なんで分からないの」とあきれられ、「さっぱり分からん」派の人とは「分からないよねー」となぐさめ合って盛り上がる。なんだか別の楽しみ方も出てきました。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)