高校生がドラマ脚本を書き、プロの俳優とスタッフを使って監督もする。究極の若手発掘コンクール「ドラマ甲子園」第4回大賞受賞作「青い鳥なんて」(22日午後11時放送、CS放送フジテレビTWO)の試写会が先ごろ行われ、みずみずしい作風が高評価を集めた。新しい才能は、今や年齢を高校生まで下げて発掘、育成する時代だ。

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 大賞受賞作「青い鳥なんて」の作者は、都内在住の高校2年生、栗林由子さん(17)。演劇部の部長としてこれまで3本の戯曲を書いているが、ドラマ脚本も、監督も初めて。「制作の常識が分からず、自分の考えもめちゃめちゃ浅く、撮影が進むにつれて自分の弱いところを思い知らされた」「キャストの前で弱くなって折れちゃったら監督としてダメだと思って涙をこらえた」。初々しいガッツで体当たりした1週間の撮影を振り返った。

 物語は、夏休み最後の日に青いインコを保護した高校生たちの青春群像劇。彼氏とのすれ違いに悩むヒロイン、恋や友情に冷めている秀才男子、計算高いぶりっ子お嬢様、売れないおやじミュージシャンなど、すべての登場人物が青い鳥によって不思議な接点で結ばれていく。

 試写を見たが、たった1日の出来事で見違えて成長する10代のリアルが生き生きと描かれていて、正直、地上波でパッとしない作品より断然引き込まれた。拾ったインコを保護センターに届けるまでを軸に、主人公にも外野にもちょっとしたサブストーリーが同時進行していて、ピースが気持ち良くはまっていく。残念な欠点に見えていたものが次第にその人の魅力になっていて、見終わるころには1人1人を好きになる、キラキラした余韻があった。

 普通の人の、普通の日常からドラマを見つけられる感性は10代ならではだと思うし、1時間の尺で17人の登場人物を動かす構成力にも面食らう。スマホネイティブ世代らしい画面の使い方や、意外とギャル語なんか使っていない女子高生たちの会話も、頭で10代を考えてしまうオトナ脚本家には書けないディテールで新鮮だった。

 「ドラマ甲子園」を手掛けるフジテレビ鹿内植プロデューサーは、「人間の才能をいちばん純粋に抽出できるのは高校生」と話す。「大学生になると、知識や経験という引き出しが増える分、邪念が出てきて作りたいもののオリジナリティーが薄れてきてしまう。自立しているけれど、大人にもなりきれていない高校生という時期が最も純度が高くて面白い」。過去3回の大賞も、文芸風からコメディーまで多彩だ。

 現在、脚本賞は放送局系、業界団体系、自治体系など主なものだけで数十タイトルあるが、高校生限定で脚本を募集し、監督もさせて1本の作品を仕上げるチャンスがあるのはドラマ甲子園だけ。鹿内さんは「脚本を書くだけでなく、自ら監督して1本仕上げるまでの戦いを経験してもらいたい」。実践主義は、月9を書く即戦力として受賞者をどんどん現場に出す「フジテレビヤングシナリオ大賞」のDNAでもある。「将来の大事な作り手を、高校生のうちからじっくり鍛えたい。よそではやれないことをやっているという自負はあります」。

 第1回の大賞「十七歳」の脚本、監督を手掛けた青山ななみさんは、今年4月に地上波のドラマ脚本「十九歳」でプロデビューを果たしている。すでに他局のプロデューサーからプロットの依頼も寄せられているという。坂元裕二さんから「逃げ恥」の野木亜紀子さんまで、多くの売れっ子脚本家を輩出してきたがゆえに他局で大ヒットを飛ばされてしまう「ヤングシナリオ大賞」のようなジレンマに、ドラマ甲子園もいずれ見舞われるかも。鹿内さんは「その心配もあるにはありますが、今は1本でも多くの応募作品が集まってくれることが大切」と話す。

 今回の栗林さんも、ドラマ制作への興味が一気に増したようだ。高2とあって、当面の目標は大学進学だが「ドラマ作りの厳しさも知って、何かしら創作にかかわっていきたいと思いました」と頼もしく語っている。

 「青い鳥なんて」は22日午後11時から、CS放送フジテレビTWOで放送。出演は飯豊まりえ、杉野遥亮、中村ゆりか、マキタスポーツほか。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)