1月期の冬ドラマが続々と終了し、かなりハマって見ていたフジテレビ系「スタンドUPスタート」(水曜午後10時)も29日で最終回を迎える。「起業」をテーマにした人間ドラマが生き生きと描かれ、マンガ原作ならではの痛快なせりふの数々は作品の大きな魅力でもあった。「資産は人なり」を証明してきた主人公、三星大陽(竜星涼)の大勝負を前に、登場人物たちのパワーワードをメモしてみた。

◆「資産は人なり。俺はそれを証明したい。必要なんだよ、林田さんという資産が」(1話)

メガバンク融資部門時代の名刺でホステスさんに自慢話している元銀行マン(小手伸也)に起業を持ちかける初回。渋沢栄一の「資産は人なり」をモットーとする主人公、三星大海の馬力を竜星涼さんがぐいぐい描き、“人間投資家”なる肩書の極意がよく分かるせりふだった。「俺みたいに変なやつは今後そうそう現れないぞ。本音でしゃべるなら今しかない」という直球の笑顔も痛快。

◆「功績というのは肩書じゃない。誰かと歩いてきた道のことだよ」(2話)

ベンチャー経営に失敗した元社長(野村周平)を立ち直らせたせりふ。あれもこれも自分でやってきたという慢心で自分を見失う「社長病」にフォーカスし、仲間の存在という“特効薬”の意味がしみじみ。再び歩き出す野村周平と岡本玲の友情はいい物語だった。

◆「難しかですね、こがん時のリアクションって。とりあえず、ざっくり賛成の人は、拍手?」(5話)

大企業が去った造船所跡地をネットスーパーでよみがえらせたい元責任者、武藤(塚地武雅)の事業説明会で、小さな店の女性店主が語った言葉。商店街の守旧派勢力に阻まれた武藤が、若く小さな店たちのプチ案件から活路を見いだしていく展開は感動的で、賛成、反対と二極化しない「ざっくり賛成」という背中の押し方に目からウロコ。

◆「だから私も、五十嵐さんが失敗しても絶対笑いません。失敗したことより、挑戦したことを、私だけはしっかり見てますけん」(6話)

造船所閉鎖で再就職に失敗しまくり自信を失ったかつての上司に、武藤がかけた言葉。「やることに意味がある。そう思えるのは、一緒に頑張ってくれる人たちが、私が失敗することを絶対に笑わないからなんです」。この人の奮闘を3話くらい見てきただけにずっしりと心に響き、塚地の熱演もせりふに合っていた。

◆「特別報酬や成果の見える化で盛り上がるのは、一部の若手社員だけだ。長く勤める者たちは、むしろ望まない競争を強いられ、やる気をそがれている。経営者は常に人の弱さを戦略に入れるべきだ」(7話)

大陽の兄で、三ツ星重工社長の三星大海(小泉孝太郎)のせりふ。人の強さ、前進する力を信じる大陽と、人の弱さを前提に組織を引っ張っていく大海の哲学の違いがよく分かり、この兄弟は2人そろって最強なのだと、後半の展開へ向けてわくわく。

◆「いいことも悪いこともあったってだけなんです。でも、ムダだったことなんて何ひとつない」(8話)

組織も家庭も、居場所をなくした会社人生を嘆く人に、自らも社長室長のポストを失った後輩(戸次重幸)が語る言葉。「全部私たちが選んできた結果なんですから。間違えることもありますよ」という前段もいい。学生から定年世代まで、あらゆる立場の人に言える話で、個人的にはこのせりふがいちばん好きかも。こういうせりふを任される俳優は果報者だと思う。

◆「ごめん。きっと俺は時間が戻っても八神君という資産に投資すると思う。何度つまずいたって人は立ち上がれる。人は資産なんだ」(10話)

起業に失敗した恨みで敵方に回った男、八神の罵倒を受けた大陽の言葉。自分の投資が人を追い込んだ過去を2週にわたって思い悩み、たどり着いた思いが何よりの評価でよかった。「人は資産なり」を信じ抜く大陽の真価が詰まったせりふで、こう言われた八神がどう動くのかも気になる。

◆「海兄(にぃ)、スタートアップしよう」(10話)

副社長である叔父(反町隆史)の策略で三ツ星重工社長の座を追われた大海に、大陽がかけた言葉。かつて自分が三ツ星重工を追われた際、「俺のやり方で海兄を支える」と言った言葉の意味がここにつながった。人間投資家として起業に関わったさまざまな才能が合流し、兄弟の逆転劇がどう展開するか。最後まで見届けたい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)