22日に亡くなった俳優平幹二朗さん(享年82)の葬儀・告別式が28日、東京・青山葬儀所で営まれた。喪主を務めた長男で俳優平岳大(たけひろ=42)が、亡くなる前夜、平さんと語り合ったことを明かした。関係者ら約600人が参列した。

 岳大は喪主あいさつで、平さんと過ごした最後の夜を思い出し、「父は幸せだったと思います」と語った。

 岳大の双子の妹に先月、第2子となる長男が誕生したため、命日の前日21日に平さん、岳大夫妻の3人で、妹の元を訪れた。岳大によると、平さんは最初こそ離れて孫を見ていたが、慣れてくると孫を抱きかかえ、哺乳瓶でミルクをあげていたという。

 岳大は「気を良くしたのか、その晩、(父は)大好きなワインをたくさんいただきました。妹と父と僕で、今までできなかった家族の会話ができました。気を良くしたのか、さらにお酒をいただきました」と振り返った。

 平さんは1970年に女優佐久間良子(77)と結婚、74年に岳大らが生まれたが、84年に離婚した。きょうだいは佐久間が引き取ったため、岳大らの子供時代、父子の濃密な時間は少なかった。平さんにとっても同じで、父子の時間、孫との対面を楽しんだ。

 岳大は「(酔って)フラフラの父を抱きかかえ、家に送り届け、ベッドに座らせ『もう飲むなよ』と言ったら、子供が親に向けるようなかわいい顔をして『岳、もう帰りなさい』と笑っていました」と話した。最後に見た父は、笑顔の父だった。

 親族らが最後の別れを済ませると、岳大は位牌(いはい)を抱き、参列者に謝意を示した。憔悴(しょうすい)した表情だったが、しっかりした声で「ありがとうございます」と述べた。出棺時には、平さんの代表作、ギリシャ悲劇「王女メディア」で使用したヘンデルの「サラバンド」の曲が流れ、参列者から「平さんお疲れさま」「愛をありがとう」と声が上がった。名優は拍手で見送られ、旅立った。

 佐久間は前日の通夜に続いて参列、同葬儀所で平さんに別れを告げた。弔辞は、俳優座時代の後輩、栗原小巻らが読んだ。【小林千穂】