今年9月に3代目桂小南を襲名する桂小南治(55)が、襲名会見で印象深い話をしていた。

 師匠で、96年に亡くなった2代目小南さんのことを聞かれた小南治は「温和な師匠でした」と振り返った。楽屋で、前座に大きな声で怒るようなことは決してしなかったという。

 さらに小南治は、同席した落語芸術協会会長の桂歌丸(80)も温和な人だとした。南らくと名乗っていた前座時代、楽屋でお茶出ししていた時のこと。ある三味線の師匠が使った湯飲みに付いた口紅が取れなかった。流しにあった手洗いせっけんで口紅を落として、次のお茶出しをした。

 歌丸がちょいちょいと手招きして呼んだ。小声で「このお茶、化粧(せっけん)のにおいがするよ。気を付けた方がいいよ」と、注意してくれたという。

 小南治は「前座をつかまえて『なんだ、これは! 変なにおいがするじゃないか!』と怒鳴る師匠もいますし、私もまだ未熟ですから大きな声でしかることもある。でも、歌丸師匠に手招きされ、きちんと言ってくださって、ああ、本当に気を付けなきゃと思ったんです。私もそういう人になりたいなと思いました。落語にも出てしまいますから」と話した。

 常日ごろの振る舞いが大事なのだと、あらためて思った話だった。