小松政夫(75)が師匠植木等さんとの43年におよぶ師弟関係をつづった著書「昭和と師弟愛」(KADOKAWA刊)が、今日28日に発売される。

 小松は車の敏腕セールスマンだった22歳の時、「クレージー・キャッツ」の人気者だった植木さんの運転手兼付き人となった。3年10カ月の付き人生活を経て、07年に80歳で亡くなるまで濃密な師弟関係を送った。今回の執筆も「生きざまを見られて人生の糧になった。素晴らしい人間性の真の姿を知ってほしかった」と話す。

 ゴルフ場の帰りに、そば店に立ち寄ったという。小松はかけそば、植木さんはかつ丼と天丼を頼んだ。料理がくると、植木さんは「胃が重くて食えねえ。お前が食ってくれ」。それは、思いやりだった。

 小松が映画評論家淀川長治さんの物まねを始めると、植木さんに「お前の物まねは本物だ。観察力が優れている」と励まされたという。その後の「知らない、知らない、知らない」「ねえ、おせ~て」「あんたはエライ」のギャグも実在のモデルがいて、人間観察から生まれた。

 事務所を独立する時には、関係者に「干すとか、意地悪するとか、そういうことがあれば、おれが承知しないからな」とくぎを刺し、「何かあったら、おれのところに来い」と送り出した。小松の仲人は植木さんだった。「人生で1回しかしていない仲人をしてくれた。13歳で父親を亡くしているので、『おやじさん』と言えば、植木さんが浮かびます」。尽きない師匠への思いが詰まっている。