総製作費150億円をかけた日中合作映画「空海-KU-KAI 美しき王妃の謎」(チェン・カイコー監督、来年2月24日公開)の完成会見がこのほど、中国・北京市内のホテルで行われた。空海を演じた主演の染谷将太(25)のほか阿部寛(53)松坂慶子(65)原作者夢枕獏氏が出席。中国では5万スクリーンで公開されるスケールに、染谷らは興奮を隠せなかった。

 中国の巨匠チェン監督の作品とあり、今月22日から先行公開される中国では、5万スクリーンで上映予定。日本公開も300スクリーンとトップクラスではあるが、全世界でスクリーン数が1位の中国のスケールはとにかく壮大だ。

 CG全盛時代に、あえて唐の都・長安(現在の西安市)をセットで再現。西安から450キロ離れた襄陽市(湖北省)に東京ドーム8個分もの巨大な長安の街を6年間かけて作った。染谷が「車でも1日では回りきれない。セットではなくて建築物」、松坂も「世界遺産になってもおかしくない」と驚くほどの、精巧な街を再現した。

 主人公の1人、空海には染谷の主演作「寄生獣」を見たチェン監督が「安らかな気持ちを持ち、かつ知性あふれる和僧は彼しかいない」と抜てき。染谷も髪をそり、全編中国語のセリフに挑み、約5カ月間にも及ぶ中国ロケを敢行した。「セリフは音で覚えるしかなかった。集中力との戦いだったが気を使ってもらい頑張れた。現地は日本の居酒屋が1軒だけあったが、行く余裕はなかった」。

 本作は空海と、中国の人気俳優ホアン・シュアン(32)演じる白楽天(後の大詩人・白居易)が、王朝を震撼(しんかん)させる怪事件の謎に迫る物語。2人のシーンが多く、染谷はホアンにとても助けられたという。「僕のセリフもサポートしてくれた。彼がいなければ、この作品はできなかった。まさに相棒。友情が深くなった」と振り返った。

 日中関係は時の政治的な思惑に左右されるが、両国の友好は1000年以上も昔から築かれてきた。チェン監督は「日中友好を次の代に引き継ぐのが私たちの仕事。途絶えないようにしたい」と話した。【竹村章】

 ◆中国の映画事情 経済成長とともに中国映画界も発展している。16年に米国を抜きスクリーン数は世界1位。今年公開された「戦狼2」は興収974億円で、アジア映画最高を更新した。ちなみに「君の名は。」も興収97億円で邦画の歴代1位を更新。国内の入場料平均は1230円にも上り、外国作品上映の規制はあるが巨大市場になっている。