武田梨奈(27)が3日、東京・シネ・リーブル池袋で行われた映画「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。」初日舞台あいさつで、泳げないながらクジラの飼育員役のオファーを受け「鬼のようなトレーニング」で撮影前に泳ぎをマスターしたと明かした。

映画は、和歌山県太地町にあるクジラだけを飼育する「太地町立くじらの博物館」を舞台にした作品で、実話の映画化。武田は、矢野聖人(26)演じるクジラを愛する青年・鯨井太一ら飼育員の助っ人として、東京の水族館から呼ばれた白石唯を演じた。

オファーを受けた時は「泳げないって言って、キャスティングに呼ばれなかったらと思って、言わなかったです」といい「泳がなきゃいけないと、撮影の1カ月前に着衣水泳の免許を持っている方に、鬼のようなトレーニングをしていただいた」と振り返った。

クジラショーの場面では、クジラに乗るサーフィンにも挑戦した。撮影前、本職の飼育員に相談した藤原知之監督は「クジラは、ただサインしただけではジャンプしない。生き物なので目と目を合わせて心と心が通じないと動いてくれない。梨奈ちゃんが水中で技をやりたいと言った時は『さすがに難しい』と言われました」と飼育員から厳しいと指摘されたという。

結局は本職に演じてもらい、顔が見えるところだけ武田ら俳優が演じる吹き替えで対応する準備をしたが、武田らは吹き替えなしで演じきった。同監督は「みんな、すごい努力してくれて実際に自分でやった。それがすごいと思うし、さすが」とたたえた。

太地町は、クジラやイルカの漁が伝統で、食文化であり、地域住民の生業だ。一方で、09年度の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した米映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)が製作されたり、海外の反捕鯨団体からは批判の目が向けられている。「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。」は、エンターテインメント作品でありながら、そうした側面も描いている。

映画好きでもある武田は「ザ・コーヴ」はもちろん、「ザ・コーヴ」の反証映画として製作された16年の日本映画「ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~」(八木景子監督)も見て、一連の問題を勉強し、考えた上で出演を決めた。その覚悟が、泳げないながらもクジラショーを体当たりで演じることにつながった。「深いところで、クジラやイルカのように泳げるようにしていただいて、良かったです」。

この日は武田と矢野のほか学芸員の間柴望美役の岡本玲(27)飼育員の野崎沙也加役の秋吉織栄(32)渡辺ケンジ役の葉山昴(33)岩崎守町長役の近藤芳正(57)富樫文朗館長役の鶴見辰吾(53)が登壇した。【村上幸将】