10月27日に公開した「映画HUGっと!プリキュア■ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」が、初日からの2日間で興行収入3億5000万円、30万9781人を動員と、歴代最高の好スタートを切った。大ヒットを記念し、発売中の「プリキュア新聞2018秋号」から、紙面に未掲載のインタビューを、ニッカンスポーツコムで「プリキュア新聞2018秋号 特別版」として2日連続で公開する。1回目は、宮野真守(35)が劇中で演じたシリーズ史上屈指の敵ミデンをはじめ、キャラクターに魂を吹き込むとも言われる、声優として演じることへの向き合い方を語る。【村上幸将】

 

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-「プリキュア」15周年で初出演

宮野 15周年のお祭りであることはすごい大事。何よりも、僕がこの作品から何を感じて、好きになって、大事にするかは自分なりに、いっぱい、いっぱい見つけて…それを見つけられた本当にすてきな作品。僕の感じたすてきさを全て感じて下さいという押しつけはしたくないので。僕自身は、いっぱい受け取り、その上で全力で臨みました。

-「プリキュア」の印象は

宮野 プリキュアは、心に響くものに真っすぐに向かっていくところが、非常にメッセージ性があって、すてきな物語。本気さが大事なんです。(ミデンは)人との接し方が分からなかったり、手段を間違えてしまったりとか…。でもハグしたり…人とつながることって、あんなに簡単で、ちゃんと分かり合う、話すことが大事だったんだなと気付くんですね。子供向け作品だからということは全然関係なくて、作品やキャラクターの根本をしっかり理解して、本気で望んで、宮野真守自身の感情がグルグルになるくらい、自分の中で動かして全力で望むことが大事で、それこそが子どもに伝わる。昔、子供向け作品をやった時に、当時のディレクターに言っていただけたのが、僕の中で非常に大きくて。「甘い考え、役者としての小手先のやり方は、子どもにこそバレるから。絶対に通用しないから。だから君たちが、ちゃんと役のことを考えて、役に向かって全力で表現して、それが子どもに伝わって、すてきな思いに変わっていく」って。ネタバレをすると、カメラのおばけみたいなことにはなってしまいますけど、決してものではなく、せっかくファンタジーで描けるアニメーションだから、魂が宿った瞬間に一個人なので、個性だったり感情を、しっかり演じて表現して、子どもたちが受け取った時に、ずっと使っているふでばこを、もっと大事にしようとか、いろいろな優しい気持ちを抱いてくれれば。

-テレビ朝日系で放送中の「HUGっと! プリキュア」(日曜午前8時半)への印象は

宮野 「HUGっと!」には「なんでもできる! なんでもなれる!」というものが、キュアエールのテーマとしてあるんですけど、同じセリフをミデンも言うんですよね。でも、前向きで輝いている、とても大事な言葉が、方法を間違えちゃうと、別の意味になって、ともすれば人を傷つける凶器になってしまう。「プリキュア」は大事なメッセージ性を真正面から向かって表現しているから、大人も子どもも楽しめるエンターテインメントになっていると思います。

-プリキュアの技を使うキャラを演じるために、全プリキュアの資料で学んだ

宮野 今回はプレスコもあって、CGのところは先に声を入れたりして…今だからこそ出来る技術、表現の仕方で、最高のエンターテインメントを見せるところも時代の移り変わりの中で大事じゃないですか。見せ方の広がり、多様さを見せていきながらも、根本のある何かが好き…僕にとってはお芝居が好きだという気持ちを、しっかりと携えて向かわないといけないと思うので。

-いろいろなキャラクターを演じ、いろいろなイベントで、キャラクターを背負って登壇するイベントでも血肉が通ったトーク、立ち居振る舞いをする

宮野 どう向き合うかの問題ですよね。僕はやっぱり、自分が携わる以上は、役に対しても“共感性”が必要だと思っていて。共通するじゃなくて共感すること。似ている、似ていないではなくて…そのキャラクターを自分が受ける時点で、自分なんですよ。自分の感情を動かすしか、ないじゃないですか? もちろんキャラクターの特性だったり性格正確はあるんですけど、それをかたどるのではなく、踏まえて自分の感情を動かす…そうじゃないと、ちゃんと言葉に思いが乗らないなと思うですよね。ミデンの描かれ方で、魂が宿ったカメラであったとしても、根本にあるものをどれだけ感じ、言葉に発することで共感性が全然、変わると思うんです。やっぱり、自分が携わった以上、僕は自分の感情でやるしかないので、ミデンとして、どう苦しみ、楽しみ、愛し愛されるかを追及すると、自分の言葉のように担当した役、キャラを語れるようになる。僕にとっては、それが役を演じる上で必要なこと…そうありたいと思うので。

-普段、「プリキュア」を見ない自身のファンも映画館に足を運ぶ可能性がある

宮野 それはありがたいですね。僕が出演できた意味も少しはあるかなと思いますし。

-「ふたりはプリキュア」から15年。プリキュアを演じた声優も母になる人が出始め、見たファンも20歳前後になっている。「HUG」は育児がメーンテーマだが、今回の秋の映画では、はぐたんを立派に育てたはなが、仲間達も赤ちゃんになり、爆発する。社会問題化している育児ノイローゼの問題すら踏まえているように感じる

宮野 (作品の中にテーマとして)入れていると思いますよ。社会問題のアンチテーゼみたいなことまでは言わなくとも、やっぱり子どもと相対することは、こんなに大変なんだということに、ちゃんと向き合うことで、ママたちは「そう、そう」と共感性があると思う。ただ実のない、おとぎ話でやってしまうと、子どもにも、もしかしたら響かない。現代日本においては、大人と子どもが、それぞれに心動かされるものがあるということが、もしかしたら今のアニメには必要かもしれない。そこは「プリキュア」だからこそ出来るというところで…ちゃんと社会的テーマに向かいながらも、子どもたちが興奮する仕掛けだったり、かわいさだったりに向かっているのが絶妙なんだなと今回、参加させていただいて非常に思いました。

-映画の最後の仕掛けは、子どもも地球を救っているような気になり、絶妙

宮野 時代なのかなと思って。ああいう、声を出して応援する応援上映なども、1このエンタメとして確立しているのかなと。

次回は、宮野が「プリキュア」をはじめとした子供向けの作品で演じる際のこだわりを語る。

 

◆宮野真守(みやの・まもる)1983年(昭58)6月8日、埼玉県生まれ。01年に海外ドラマ「私はケイトリン」の吹き替えで声優デビュー。主な作品は、06年「桜蘭高校ホスト部」須王環役、「DEATHNOTE」夜神月役、07年「機動戦士ガンダム00」刹那・F・セイエイ役、14年「東京喰種トーキョーグール」月山習役など多数。近年はミュージカル「王家の紋章」イズミル役や劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season月《下弦の月》捨之介役で主演など俳優としても活動し、08年にはシングル「Discovery」でアーティストデビューを果たし、活躍している。

 

※■はハートマークの白