第69回NHK紅白歌合戦(総合で午後7時15分)の放送が、目前に迫ってきた。29日から3日間、行われたリハーサルを取材した記者が、3年連続で今年の紅白の見どころを紹介する。【村上幸将】

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平成最後の紅白は、13年に史上初の50回出場を果たして卒業した北島三郎(82)が5年ぶり、そしてサザンオールスターズが1983年(昭58)以来35年ぶりと、紅組、白組に関わらない特別枠で大物が出演する。またテレビでの歌唱及び生出演をしたことがなかった米津玄師(27)が、地元・徳島県からの生中継の形で、出演が電撃的に決まった。

リハーサルを取材した中で、パフォーマンスを見ることが出来たのは北島のみだが、北島自身が29日の囲み取材の際「動くものが出てくる。俺の歌を忘れちゃうくらいの。それでもいいな、と言われるものを用意した」と口にした仕掛けは圧巻だ。巨大なかぶとの頭上に載せられたしゃちほこの上に北島が乗り「まつり」を熱唱する。帰ってきた北島の熱い歌声含め、壮観の一言…必見、いや必聴だろう。

その北島に、5年ぶりに帰ってきた紅白の印象を聞くと、良い意味での変化を口にした。

北島 (紅白を)5年前に降りたんだけども…ちょっと稽古を見ていますけども、いつもと違った感じでね。とても明るくて、きれいだよね。こういう形の輪が、日本ばかりじゃなく世界の皆さん、日本を離れた加田達に届くと良いなと思わず、感じちゃった。今回はすてきですよ。

北島が「明るい」「きれい」と語るように、派手で明るいステージングが多い印象だ。その中でも異色なのは、ミュージカル「刀剣乱舞」に登場する「刀剣男士」のステージだ。19人が剣を振るうアクションは壮観だ。その刀剣男士が、イケメン演歌歌手の山内惠介とコラボした「さらせ冬の嵐~刀剣男士コラボスペシャル~」は、日本の伝統の演歌と、新しい文化との融合すら感じられた。

あまりに斬新で、取材中に笑いをこらえることが出来なかったのが、紅組の天童よしみ(64)が異色の筋トレ番組として19年1月に第2弾の放送が決まったNHK総合「みんなで筋肉体操」とコラボした「ソーラン祭り節2018~どさんこver.~」だ。天童が「そいや!」「どっこいしょ!」などと熱唱する声に合わせて「みんなで筋肉体操」に出演の武田真治(46)、スウェーデン生まれの庭師の村雨辰剛、東大卒の新人弁護士の小林航太が腕立て伏せ、スクワットなどを連続で披露した。

さらに武田が、得意のサックスを二の腕の筋肉を最大限に盛り上げ、熱く演奏する。ステージに登場した瞬間、記者の間から「ブッ!!」「ハハハハ」などと爆笑が巻き起こった。記者も不覚ながら笑いすぎ、腹が痛くて取材にならないほどだった。天童×「みんなで筋肉体操」のコラボを見ないで、平成最後の年越しは出来ないだろう。

歌唱力で印象的だったアーティストには、17年の前回、エレファントカシマシとして出場した宮本浩次(52)が椎名林檎(40)が組んで特別企画として歌う「獣ゆく細道」を挙げたい。記者は昨年の見どころでも、バンド30周年で初出場したエレカシを一押しに挙げ「バンド30周年で初出場したバンドの歴史のみならず、自身の人生そのものを込めたかのような、宮本浩次の魂の歌声は必聴だ」と紹介した。

リハーサルを見たが、一言で言えば“静と動”。2人は楽曲をリリースした際に発表したビジュアル同様、和装で歌唱するが、宮本が羽織を脱ぎ捨て、激しく上体を動かし、苦悩すら吐露するように感情をあらわに歌う一方、椎名は彫像のように静かに歌い上げる。一見、対称的ながら、重厚感ある両者の歌声がシンクロし、一体化していく様に感動を覚えた。記者席にいた多くの記者も、微動だにせず聞き入っていた。

宮本は24日に大阪城ホールで開催された、東京スカパラダイスオーケストラのライブで「明日以外すべて燃やせfeat.宮本浩次」を披露した際もしかりだが、所属のエレカシのライブ同様、激しく踊り、シャウトし、人生を込めたような熱い歌声を披露しつつも、競演した他のアーティストと“化学反応”を起こし、一体に融合したかのような“進化形”を見せる。あれだけ個性的ながら、競演したアーティストの存在を消すどころか、さらに輝きを増す…そんな「椎名林檎と宮本浩次」は必見だ。