宝塚歌劇団の星組トップ紅(くれない)ゆずる、相手娘役綺咲愛里(きさき・あいり)のトップコンビが19日、兵庫・宝塚大劇場で、退団公演「GOD OF STARS-食聖-」「エクレール・ブリアン」の千秋楽を迎え、本拠地に別れを告げた。

大阪出身トップらしく「泣き笑い」で締めたサヨナラショーには、お笑いキャラ「紅子」も登場。雨中のパレードには約6000人が集まった。

2人は、同公演の東京宝塚劇場千秋楽、10月13日付で添い遂げ退団する。

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すすり泣きに包まれるはずの客席、ファンから「泣いて笑って大忙しや~っ」。前代未聞のかけ声が飛び、紅が「分かった~っ」と返す。泣かせて笑わせ…さながら“人情喜劇”のようなサヨナラショーだった。

大阪出身の紅は「しんみり終わりたくない」と言い、中盤には、紅のおっかけで客席案内係を務める「紅子」として出演。制服姿の「紅子」は、17年7カ月、紅ゆずるが男役を務めてきた本拠地・宝塚大劇場のセンターに座り込み、床をなで「ホームグラウンド、聖地や」。本来、歌う場面で、1人話芸を展開した。

客席は爆笑に包まれた-かと思えば、その後は一転。白ラメのスーツ姿で決め、花束から花を抜き取り客席へ。笑いの次はキザに決めて、ファンを泣かせた。すすり泣くファンが出ると、ショーの最後は、落語の大ネタ「地獄八景亡者戯」を題材にした異色主演作からの和風ナンバーを披露。星組全員で「なんまいだ~」と合唱し、締めた。

紅はもともと、熱心な宝塚ファン。サヨナラのしんみりがつらかった経験から「ファンに楽しい気持ちで終わってほしい」と願っての“作戦”だった。宝塚愛は誰よりも強く、最後のあいさつは、正装はかま姿で大階段を下りた。成績下位で入団しながら努力を重ねてたどり着いた頂点。紅は「こんな端っこにいた私を見いだしてくれた皆さまに感謝しかない」と礼を述べ、自らも涙した。

終演後には会見し、紅子について「しんみり色を払拭(ふっしょく)したかった」。自身の涙には「大劇場の床にしみ込んだと思います」と、劇団105年史に名を刻み、満足そうに話していた。【村上久美子】

◆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。02年入団。星組一筋。16年11月に同組トップ。17年1月「オーム・シャンティ・オーム」でトップ初主演。同年「スカーレット・ピンパーネル」で本拠地お披露目。昨年は落語題材の異色作、台湾公演に主演。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。