新作歌舞伎が世界に発信される。26日からアマゾンプライムビデオで配信される「図夢歌舞伎 弥次喜多」で、400年を越える歌舞伎の歴史でも初の試みだ。4年来歌舞伎座で弥次喜多コンビを演じてきた松本幸四郎(47)と市川猿之助(45)が主演。猿之助のいとこの中車(香川照之=54)、幸四郎の長男・市川染五郎(15)、中車の長男・團子(16)とファミリーが顔をそろえる。1年間は日本語版で配信。その後は各国からのオファーに応じ、外国語字幕などを付ける。

監督・脚本・演出も兼ねる猿之助は「毎年新作をお披露目してきた『弥次喜多』が今年はコロナで難しくなった。そこでオンラインという手があることに気付いた」と振り返る。映像化の過程にはドタバタがあった。「(藤森圭太郎)監督には入ってもらったわけですが、なにせ歌舞伎のスタッフですから映画の助監督に相当する仕切り役がいない。素人集団のカオスでしたね」と猿之助は言う。

江戸のウイルス騒動を巡る今回の物語はよろず屋(コンビニ)が舞台。コロナ禍を反映した世界共通の題材だ。幸四郎は「染五郎も自分でマニキュアやピアスを買って来て着けてみたり。楽しんでましたね。伝統はもちろん尊重しましたが、競争の激しい配信作品の中でも皆さんに興味を持っていただける内容になっていると思います」と言う。

◆弥次喜多 弥次郎兵衛と喜多八がお伊勢参りする道中記を面白おかしく書いた十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」が原作。歌舞伎では猿之助の曽祖父・初代市川猿翁の初演(1928年)以来、世相を反映させながら上演が続く。オンラインの「図夢歌舞伎」としては、6月の「忠臣蔵」に続いて2作目。