生田斗真(36)主演、福田靖氏(59)脚本のテレビ朝日系ドラマ「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(土曜午後11時30分)が放送中だ。

突然ゴールデン枠のドラマシナリオを任された売れない脚本家の悲喜こもごもを描くホームコメディー。ドラマ関係者に翻弄(ほんろう)される脚本家・吉丸を生田がコミカル演じている。福田氏が実体験を元に執筆した本作。お互いの印象からドラマ制作のリアルな舞台裏まで、2人に話を聞いてみた。【構成=遠藤尚子】

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-お互いの印象は

福田氏 ジャニーズにあって、俳優業だけをやっていらっしゃる特別なポジションの方。初めて意識したのは「土竜の唄」という映画で、そうしたうちに大河と。僕が忙しくしている間にもうこのポジションまで来られてしまった、と。

生田 ありがとうございます(笑い)。骨太の中にある、小気味いいせりふの応酬が福田さん脚本の魅力の1つだと思うので、すごく楽しみにしていました。最初で最後になるであろうという、ご自身をモデルとした…

福田氏 最初で最後です(笑い)。

生田 経験を生かした脚本も役者冥利(みょうり)に尽きるというか、僕なんかでいいんですかという気持ちもあります。

-福田さんは撮影現場にも足を運んだと

福田氏 今回は描けなかったですけど、「脚本家は現場に行っても何もすることがない」っていうシーンも書きたかったんです。

生田 あははっ! それ面白いですね。

福田氏 ただのお客さんなんです。監督さんが仕切っていて、俳優さんが演じていて、スタッフが忙しくしている。僕はただお菓子を食べながら見ているだけ(笑い)。

生田 でも、いつもおいしい差し入れを持ってきてくださって、現場のお茶場はにぎわってましたよ。

-脚本家でも立ち入れないものがある

福田氏 脚本自体は完成された文芸作品でも何でもないので。脚本は設計図ですから。その設計図がよくできていれば現場の人は楽しく、もめないし、スケジュールも押さない。そういうものを届けるのが僕の仕事なので。現場に行けば任せるしかないし、何も言えません。

-ドラマではプロデューサーが視聴率動向に気をもみます。俳優、脚本家としてはどこまで気になるものでしょう

生田 僕は割と無頓着かもしれないですね、それがいいのか悪いのか。いい人はいいって言うし、ダメな人はダメって言うだろうって思っているから(笑い)。

福田氏 以前はすごく気にしていました。今は媒体が多様化して視聴率が物差しとして分かりにくくなっているので、ここに一喜一憂してもしょうがないなと。漠然と、ですが。主にテレビのエンターテインメントに関わっている以上は、最大多数の最大幸福を追い求めるわけです。お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで楽しく、それぞれの部屋でバラバラに見なくても「同じものを見ているなら一緒に見ようよ」と集まって、結果数字が上がるというのが僕は一番美しいと思っていました。

-放送開始3カ月前にもかかわらず、企画から白紙状態で吉丸に脚本執筆の依頼が舞い込みます

福田氏 (即答で)ありますよ。

生田 (うなずきながら)ガンガンあります。

福田氏 大変です。当然売れっ子さんから始まって、最後は仕事がなくて暇している人間に当たるわけです。そこに僕ですから。その時はすさんでますよね、空気が(笑い)。

生田 舞台でもありますね。稽古初日に台本がなくて、日がずれますとか。

福田氏 僕はこの仕事をする前は舞台の仕事をしていたので、初日の幕が開かなかったことがありました。今でも夢に見ます。(書けない時は)主演俳優さんやプロデューサーさんの顔が思い浮かんで、どうしようどうしよう…と。「どうしようじゃないんだ、書け!」「書けないんだよ!」。その無限ループの中でもだえ苦しむという。

生田 本当に尊敬します。それに尽きます。でも、福田さんは僕が知る脚本家の方の中で一番スマートだと思います。脚本家って、ドラマを書いている最中にどんどんボロボロになっていくんです。

福田氏 (悲痛な表情で)ああ…。

生田 痩せて、クマできて。でも福田さんはいつもスマート。だから家で「うわ~書けない」っていうイメージが湧かないんです。

-ドラマのように、急きょ脚本の変更を求められることも?

福田氏 今はそんなにないですけど、最初の頃は「いいんだけどさ、ここをこう変えてこう変えて」って。初めは「いいんだけど」なのに、終わった頃には跡形もなくなって(笑い)。

生田 台本が僕たちに渡る手前で、プロデューサーさんや脚本家の方とそういう“戦争”が起きてるんだと思います。

福田氏 事件は現場で起きてるんじゃなくて、会議室で起きてるんです。

生田 まさにそうですね(笑い)。

 

◆生田斗真(いくた・とうま)1984年(昭59)10月7日、北海道生まれ。96年ジャニーズ入り。映画、ドラマに出演多数で、19年日本テレビ系「俺の話は長い」に主演。同年NHK大河「いだてん~東京オリムピック噺」にも出演。175センチ、血液型A。

◆福田靖(ふくだ・やすし)1962年(昭37)年、山口県生まれ。95年脚本家デビュー。フジテレビ「HERO」「海猿」など人気シリーズや、NHK大河ドラマ「龍馬伝」、NHK連続テレビ小説「まんぷく」、テレビ朝日「DOCTORS~最強の名医~」などを手掛ける。