アカデミー賞の前哨戦として知られる第78回ゴールデン・グローブ賞の授賞式が2月28日、コロナ禍の影響で2カ月近く延期されて行われ、「ノマドランド」がドラマ部門の作品賞と監督賞の2冠に輝いた。

例年は1月第1週の日曜日にビバリー・ヒルトン・ホテルで開催されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年は史上初めてビバリーヒルズとニューヨークの東西両海岸から中継をつないでリモートで行われた。

感染予防対策としてティナ・フェイはニューヨークから、エイミー・ポーラはビバリーヒルズからそれぞれ司会を担当し、ノミネートされたセレブたちはリモートでの出演となった。両会場には最前線で働く医療従事者らが招かれ、俳優ホアキン・フェニックスら数名のセレブがプレゼンテーターとして登場して華を添えた。

「ノマドランド」は女優フランシス・マクドーマンド演じる仕事も住処も失い、最愛の夫も亡くした主人公が車上生活者として放浪の旅を続ける物語。ベネチア国際映画祭で金獅子賞、トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞するなど今年の賞レースを独走しており、アカデミー賞の最有力候補に挙がっている。マクドーマンドは主演女優賞を逃したものの、メガホンを取った中国系のクロエ・ジャオ監督が女性として37年ぶりとなる監督賞に輝いた。

また、大腸がんのために昨年8月に亡くなったチャドウィック・ボーズマンさんが、遺作となった「マ・レニーのブラックボトム」で同部門主演男優賞を受賞。リモートで出席した妻で歌手のテイラー・シモーネ・レッドワードが「彼は神に感謝し、両親に感謝し、先祖の導き犠牲に感謝するでしょう」と亡き夫を代弁して涙ながらにスピーチし、受賞を喜んだ。

一方、コメディー/ミュージカル部門の作品賞は「続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画」が受賞し、サーシャ・バロン・コーエンが主演男優賞に輝く2冠となった。

ゴールデン・グローブ賞はハリウッド外国人映画記者協会の会員による投票で選出される賞として知られているが、授賞式を前に黒人会員が一人もいないことがロサンゼルス・タイムズ紙で報じられ物議を醸したことを受け、冒頭で司会者2人がこの問題をネタにして笑いを誘う場面も見られた。その後、協会役員が登壇して黒人ジャーナリストを迎え入れることを発表し、多様性のある組織に改善することを約束した。(ロサンゼルス=千歳香奈子)