安田顕(47)と山田裕貴(30)が映画「ハザードランプ」(榊英雄監督、22年公開)に主演することが15日、分かった。夜の地方都市を走る運転代行社のドライバー2人と客との、濃密な人間模様を描いた映画の主な舞台は車内。コロナ禍真っただ中の2月に、福井県内で密な車内を中心に3週間行った撮影を、徹底した予防対策で乗り切った。

「ハザードランプ」は、地方都市でひっそりと生きる代行ドライバー須貝(安田)が、女子中学生連れ去り事件など何かが起きる満月の夜に一癖ある新人刈谷(山田)とタッグを組む中、隠された互いの過去が交錯する物語。榊監督が17年「アリーキャット」に続きタッグを組んだ脚本家・清水匡氏によるオリジナルの物語だ。

撮影は敦賀市、小浜市など福井県嶺南地方6市町村の協力の下、2月1~21日まで行った。首都圏1都3県に緊急事態宣言が再発出された中、撮影前に俳優、メインスタッフ全員がPCR検査を受診し全員の陰性を確認。福井県とも想定されるリスクと対応を事前協議し、撮影前に事前確認をして了承を得たところでクランクインした。

俳優、スタッフは3週間、同じホテルに滞在。撮影は夜が中心で、終了は明け方が多かったこともあり、食事は弁当を配布し、全員が集まって食事する機会も回避したという。俳優が撮影中に東京と福井を往復した際や、撮影中に急きょ応援で来たスタッフには随時、抗原検査を実施した。

編集前の段階だが、本編の9割は車が絡むシーンで屋外で撮影したが、そのうち車内でのシーンは6~7割に及びそうだという。榊監督は「三密回避が常識? になってしまった21年に濃厚な男2人の物語を撮影しました。主な舞台は車内。密です。でも、コロナ対策は、もちろんバッチリですよ」と胸を張った。その上で「感情、息遣い、匂いが濃厚に感じる距離です。運転代行で働く男の、ほぼ夜一日のお話です。人間の喜怒哀楽が垣間見ることのできる半径1メートルの劇場です。安田さん、山田さん、2人の丁々発止をお楽しみにしていただけると幸いです」とコメントした。

車内での掛け合いのシーンを多く演じた山田は「脚本の想像を超えるセッションに、自分の人生より心が動いているのではないかと、自分の世界を疑いました。それくらい刺激的で、濃密な時間でした」と振り返った。安田は「最初はハードボイルド、クールな作品という印象でしたが、結果、さまざまな人間模様を描いたヒューマンな作品になった気がしております」と語った。その上で「連日の雨、風、雪。お天道様に試されているような現場でした。各シーンごと、榊監督と話し合いながら撮影に臨みました」と振り返った。

安田と山田は、19年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」で菓子店の父子を演じて以来の共演となる。山田は「自分の父親と接しているような“本物”の感覚をお芝居で味わわせてもらったことがずっと残っていて、また安田さんとまたお芝居できることに喜び、有無を言わさず『やりたい』と思いました」と熱っぽく語った。安田は「山田君はじめ、大好きな俳優さんたちとご一緒できたこと、榊組のスタッフの皆様と共に撮影できたことに感謝申し上げます。完成を心待ちにしております」と期待した。