「おしん」や「渡る世間は鬼ばかり」など日本のドラマ史に残る作品を残してきた脚本家橋田寿賀子(はしだ・すがこ)さん(本名・岩崎寿賀子=いわさき・すがこ)が4日午前9時13分、急性リンパ腫のため、静岡県熱海市内の自宅で死去した。

「おしん」の母親役から大河ドラマ「いのち」、そして「渡鬼」まで40年来、橋田ファミリーを看板女優として支えた泉ピン子が、静岡県熱海市にある橋田さんの自宅で最期をみとった。5日に発表したコメントで、橋田さんの様子を克明に伝えた。

「昨日意識がなくなったとき『ママ』って呼ぶ私の声が聞こえたのか、最後に目を見開いたんです。それが最後でした」。ピン子は橋田さんのお気に入りだった、クルーズ旅行の正月に着ていたドレスと、橋田文化財団設立時に作った松竹梅のドレスを着せ、「私がお化粧をしてあげて旅立ちました」と明かした。

生前から自らの死に言及していたという。「悲しまなくていい。千の風になっているんだから。あなたの周りにいる。私が先に逝くとは限らないけど」。ちゃめっ気たっぷりに言われていたピン子は「『千の風になって』をかけて送りました」と、遺言に沿う曲で思いをのせた。

橋田さんは99年のインタビューで「ピン子ちゃんは娘のような存在。自宅に泊まることもあります」と明かしている。ピン子も、橋田さんが04年に南極・南米へクルーズに行けば帰港を迎えに行き、約10年前橋田さんが住む熱海に移住した。「今の私があるのは橋田先生のおかげです。ずいぶんけんかもしたし、泣いたこともあったけれど、本当の娘のようにかわいがっていただきました。最後はずっとそばにいられたから。熱海に越してきた意味があったと思います」。互いが認める親子のような絆は、最期まで変わらなかった。