演歌歌手・鳥羽一郎(本名木村嘉平=よしひら、69)が先日、川崎市のクラブチッタで息子デュオの「竜徹日記」と初の親子コンサート「鳥羽一郎・竜徹日記ライブコンサート2021」を開催した。

「竜徹日記」は鳥羽の長男の木村竜蔵(32)と次男の木村徹二(30)が16年に結成した兄弟デュオ。結成の動機は「演歌では父親に勝てない。父親にない土壌ならいつか勝てるかも」だった。デュオ名は、母親が2人の育児ビデオのタイトルを「竜徹日記」としていたことから付けた。鳥羽のライフワーク「海難遺児チャリティー漁港コンサート」にゲスト出演したことはあるが、親子での本格的なコンサート開催は初めてだった。さぞやうれしいだろうと思いきや、鳥羽は「親子でコンサートができるということより、お客様の前で久々に歌えることが本当にうれしい」と話した。

鳥羽もコロナ禍の影響を受けて、ほとんどのコンサートが中止となっていた。今回の親子コンサートも本来は1月末に予定されていた。楽屋で話を聞いた際、「世の中はもちろん大変だが、歌手も本当に厳しいよ。歌いたくても、歌う場がないんだから」と嘆いた。

鳥羽は82年に代表曲「兄弟船」でデビューし、来年40周年を迎える。漁師から歌手となり、海難事故で親を亡くした遺児のためにと、88年に茨城・那珂湊から第1回海難遺児チャリティー漁港コンサートをスタート。ライフワークとして全国各地で活動を続け、公益のために寄付した者に授与される「紺綬褒章」を何度も受賞している。

節目の100回まであと4回に迫っているのだが、その4回がコロナ禍に阻まれ、昨年から開催できていないのが現状という。漁港コンサートができなければ、遺児への援助ができない。鳥羽は「できることを頑張るしかない」と振り絞るように語った。収束の兆しを見せないコロナ禍への憤りと怒りがにじんだ。【笹森文彦】