女優上久保慶子が、9月8日に初日を迎える舞台「沙也可~海峡を越えた愛~」(東京・渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール、12日まで)に出演する。

劇作家倉科遼氏(71)が製作総指揮・原作・脚本を担当。400年以上前、豊臣秀吉の朝鮮出兵に従軍した雑賀孫六(田村幸士)が離脱して、現地の娘・金美姫(夕貴まお)と結ばれ、朝鮮人・沙也可となって戦う愛の物語。日本の兵に反発しながら、やがて思いを変えていく35歳の韓国女性・姜恩珠(カン・ウンジュ)を演じる上久保に聞いてみた。

バンド活動、モデルの仕事をへて、女優の道へ進むことを決めた。「友達の紹介でアップスアカデミーっていう演技養成所に出会ったんです。夜間コースでしたけど、柳田ありすさんという講師に教えていただきました。卒業公演で舞台に立って、今に至ります」と振り返った。

「沙也可」では、製作総指揮の倉科氏の作品への思い入れの強さを感じているという。「先生が、この間も稽古場を見に来たんですけど、いろいろなアドバイスをいただいています。これは、こうなんじゃないかとか」。

6月に顔合わせを終えて、7月からは本格的な稽古が始まった。「日本人と韓国人が出てきますが、せりふは全て日本語です。私は韓国人女性の役ですが、韓国人と話す時も、日本人と話す時も日本語のせりふです。韓国人と日本人の会話では、最初は日本語でのやりとりに違和感も感じましたが、今では共通の認識ができています。3カ月近く時間を取って稽古をして、お芝居が出来上がってきている」と話している。

舞台に立ち続ける中で、さまざまなことがあった。

「1度、台本1ページ半になる長ぜりふがとんじゃったことがあるんです。私が周囲の状況を説明するせりふを言っていて、周りの人たちは私を見ている。でも、せりふがとんじゃって。どうしたかと言えば、訳の分からないことを延々としゃべっている。とにかくせりふを止めないことだけを思いながら、しゃべり続けていた。観客でおかしいなと思った人もいただろうけど、とにかくしゃべり続けて、そうしてるうちにせりふが戻ってきた。振り返ると、何で忘れたんだろうなって思うんですけどね」。

8日の初日まで、あと1週間を切った。「舞台で何度も何度も、せりふを間違えちゃったりする人とかもいるんですよね。同じシーンで何度も間違えちゃう人は多分、役を自分自身に落とし込めてないんだと思う。今は、その大切な仕上げのところです」と話している。(続く)

◆「沙也可~海峡を越えた愛~」 400年以上前に実在した人物がモデル。戦国時代、日本前項統一を成し遂げた豊臣秀吉は、東アジアの覇権を握るために30万人の兵隊を朝鮮半島に送り込んだ。

秀吉の2度にわたる朝鮮出兵「文禄の役」と「慶長の役」に、秀吉に滅ぼされた雑賀一族の再興を図るため、紀州雑賀衆の頭領の雑賀孫六は鉄砲衆を率いて従軍した。しかし大義のない戦に疑問を抱き日本軍を離脱する。雑賀一族は朝鮮軍に加わり、鉄砲の技術を伝え秀吉軍との戦いに大きく貢献して英雄となる。

日本人の孫六が、朝鮮人の沙也可となり、1人の朝鮮人女性(金美姫)と愛し合う物語を中心に描く。

チケットは(https://ticket.corich.jp/apply/113108/005/)