コメディアン、ぜんじろう(53)が、スタンダップコメディーの普及にまい進している。16年に「日本スタンダップコメディ協会」を立ち上げて副会長を務める。90年代前半に「平成の明石家さんま」としてブレーク、そしてスタンダップコメディーの旗手となるまでの歩みを聞いた。

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日本人は自身の本音を隠し、主義主張をせずにいる。

「そうしないと生きていけない、今の日本の社会は仕方ないと思う。会社にいたら主義主張とかやりすぎたら駄目なんで、終身雇用とかもあるから。それでも、人間はバカじゃないから主義主張をしないけど、持ってはいるんです。逆にアメリカ人は主義主張をするんですけど、しすぎやというのがあるんですよ。俺たちはしすぎやから、もう少し日本みたいに関係性を知って、主義主張をしない方がいいというアメリカ人もいてるんです。そこが微妙。でも人間だから、こう思うっていうのは誰でもあるんです。そこをフォローして、芸人も自分を殺して生きているんです。それをまとめてしゃべってウケたりしているんだけど、ある程度の年齢がいったらバカじゃないかと皆さんも思っている。それも聞いて、俺、あの意見に共感するわとか、スタンダップがはやっていったらなと」

今から15年くらい前、ロボットと漫才を始めた。AIという言葉も一般には知られていない時代、大きな批判を浴びた。

「僕が成功するのがうっとうしい、ねたみですよね。(爆笑問題の)太田(光)が(昨年の選挙特番のMCで)たたかれてるのもおかしい。(自民党幹事長だった)甘利(明)氏に対して『ご愁傷様』って言っている。甘利さんとかは権力じゃないですか。『お前、何言ってんねん』って言って太田をたたいているのは、ある種、社会的弱者ですよ。その人たちの意見背負って言ってるのに、現実は社会的弱者なのに、自分が強いと思って言ってるんですよ。お笑いの人も、自分はおもろないのに、『俺、おもろい』って感じでたたくじゃないですか」

ロボットの漫才で、面白さの絶対値を決めようと試みた。

「僕は『俺は天才だ』って言っていくよりも、なんでつまらないのか、じゃ面白いとは何なのかっていうのをロボットで証明したかったんですよ。絶対的な面白さっていうのは何なんやって。そしたら、『面白い』っていうことは、すごい主観的なんだっていうことに気がついた。AIは、大体で物事考えているんですよ。たとえば『こんにちは』って言ったら認識してしゃべってる。いろいろ拾って学習して『この前さ…』とか話しかけてくる。人間の方が、よっぽどランダムにしゃべっている。話が通じんという時があるけど、それでうまくやっていっている。『あの時、間違っていました』と。ロボットにちゃんとしゃべらそうと思っても、人間自体がちゃんとしゃべっていない。なるほどと思った」

そのうち、ロボット同士の漫才が見られるようになってしまうかもしれない。 「それで、客もロボット(笑い)」(終わり)

◆ぜんじろう 1968年(昭43)1月30日、兵庫県姫路市生まれ。大阪芸大芸術学部デザイン学科中退。87年、上岡龍太郎に入門、吉本興業に所属。88年に月亭かなめとの漫才コンビ、かなめ・ぜんじろう結成。同年、今宮子供えびすマンザイ新人コンクールで福笑い大賞。89年にABCお笑いグランプリで最優秀新人賞、上方漫才大賞新人奨励賞も、解散してピン芸人に。92年、毎日放送「テレビのツボ」司会でブレーク。95年「超天才・たけしの元気が出るテレビ!!」。98年渡米。01年帰国。170センチ、57キロ。