女優永野芽郁(22)が今秋公開の映画「マイ・ブロークン・マリコ」(タナダユキ監督)で主演を務めることが20日、分かった。

19年にWEB漫画誌「COMIC BRIDGE」で連載された平庫ワカ氏の同名漫画が原作。自殺した親友マリコの遺骨を持って旅に出る主人公シイノトモヨを演じる。新話が出るたびにツイッターでトレンド入りするなど大きな反響を呼んだ注目作で、役者としての新境地を切り開く。

永野は「自分の中でも大きな挑戦だったので不安もあり、とても葛藤しました」と振り返り「作品の世界観が私は大好きです。その気持ちを大事に、リスペクトを込めて、日々、体の芯が熱くなるのを感じながら心から声を出しました」と語った。

同作は20年に原作の単行本が発売されると即重版が決定。21年には文化庁主催のメディア芸術祭マンガ部門新人賞も受賞した。話題作の待望の映画化で、すでに撮影は完了。永野が演じたシイノは鬱屈(うっくつ)した毎日を送るやさぐれたOLで、これまでの清純派のイメージは封印。悲しみや怒りをはき出しながらタバコをふかし、荒々しい口調や態度をみせる演技を全身で表現しており「今までにない私を見ていただけると思います」と自信も口にした。

永野は21年にも「地獄の花園」(関和亮監督)、「そして、バトンは渡された」(前田哲監督)の主演映画2本が立て続けに公開。第45回日本アカデミー賞優秀主演女優賞も受賞するなど、今最も波に乗る若手女優の1人となっている。タナダ監督は「シイノ役には、絶対的な芝居の力はもちろんのこと、それとはまた別の魅力、重いテーマを軽やかに背負える、その俳優自身が持つチャーミングさも必要不可欠でした」と語り、永野を指名した理由について「彼女ならば、シイノの衝動を、シイノの感情を、ぶざまさをさらせる最高に格好いいシイノという1人の人間のデコボコとした魅力を、余すところなく表現できると感じたのです」と説明した。

撮影中は「シイノとして生きる永野芽郁さんに心が揺さぶられる瞬間が幾度となくありました」と振り返り「シイちゃんが、確かにそこに生きていました。作り手としてこれ以上の喜びはありません。シイノの流した涙の後に見る世界が少しでも美しいものであるように。そう願わずにはいられない、そんな作品を目指して、完成までもがき続けたいと思います。ご期待ください」と語った。

物語は鬱屈(うっくつ)した日々を送るOL、シイノトモヨがテレビのニュースで親友イカガワマリコが亡くなったことを知るところから始まる。学生時代から父親に虐待を受けていたマリコのために何かできることはないかと考えたシイノは、マリコの魂を救うために、その遺骨を奪うことを決心する。「刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れて行く!」。マリコの実家から遺骨を強奪、逃走したシイノは、マリコの遺骨を抱き、思い出を胸に2人で旅に出るというストーリーだ。脚本は向井康介氏とタナダ監督のタッグで届ける。

原作者の平庫ワカ氏にとっては初の連載作品での映画化となる。コメントも寄せ「映画が大好きなので、原作として映画の端っこにでも関われた事を光栄に思います。どう映像化されどう解釈されどう映画になっていくのか、とても楽しみです」とつづった。主演に抜てきされた永野については「一見、ご本人のイメージからかけ離れて感じるかと思うのですが、シイノのような人物像をきっと演じて頂けるのだろうなという片りんはこれまでご出演の作品の中にも垣間見えていたように思います」と期待を込め「撮影現場で最初に演技中のモニターをのぞかせて頂いた時、そこに映っている、ふてくされた少年のような女性が永野芽郁さんだとはしばらく気付きませんでした。このシイノがどのように暴れる姿を私たちは見られるのかと期待せずにいられないです」と語った。