東京・新国立劇場 中劇場で上演中されているHey!Say!JUMP高木雄也(31)の主演舞台「裏切りの街」(27日まで)の公開稽古を鑑賞した。フリーターと専業主婦の不倫を描いた作品でしっかりめの性描写もあり、生々しかった。

大胆な表現に注目がいってしまうが、高木演じる無気力なニート、菅原の「どこかにいそうなクズ感」もなかなかにリアリティーがあった。作・演出の三浦大輔氏は、高木の起用について「はまるんじゃないかと勘が働いた」といい、「演出家は役者の新しいところを発掘するのが醍醐味(だいごみ)。高木君なら菅原という役をやりきってくれるのではという予感があった。それは間違っていなかったと、稽古を終えて思っています」と語った。

菅原はバイトの無断欠勤を続け、恋人に寄生する。そのことに後ろめたさを感じつつも、主婦との不倫関係はずるずると続けてしまう。ソファに横になり気づいたら夕方、自堕落だけれど欲だけは満たす生活。はた目にはどうしようもない人物に見えるし実際そうなのだけれど、見終えると、このどうしようもない部分はきっと自分にもあるものだと突きつけられたような気持ちになる。登場人物たちが話す内容やスマホ演出などの今っぽさも相まって、菅原の存在がとてもリアルに見えた。

三浦氏は稽古期間の高木を振り返って「途中、何かの転機で菅原になれた瞬間があった。稽古の中盤くらいで、何をやっても菅原になる、という状態になれた」と安心感を持って臨めたという。刺激的な作品に挑んだ高木に、俳優としての成長の実感を聞くと「舞台では頭の中でせりふを追っちゃうことがあるんですけど、今回はほとんどないです。空気感なのかな。ステージ上で自然といられる」と、役がすっかりしみこんでいるようだった。

三浦氏は「何をやってもニコッとしてしまう。愛される素質は(役に)反映されていると思う」と、高木の憎めない人柄が菅原にもにじんでいると話す。取材後、去り際に「ひげも生やしました」とぴょこっとマスクを下げて見せた高木の姿は、確かに人好きのする雰囲気をまとっていた。

「クズの役、とってもはまっていました!」とは本人に言いづらいが、とっても魅力的なクズ役でした。     【遠藤尚子】