第75回カンヌ映画祭授賞式が28日(日本時間29日)フランスで行われ、コンペティション部門に出品された、是枝裕和監督(59)初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」(6月24日公開)に主演した韓国の俳優ソン・ガンホ(55)が、韓国人俳優として初の男優賞を受賞した。

是枝監督は授賞式後、日本メディアの囲み取材に応じた。自身の作品では、04年「誰も知らない」に14歳で初主演し日本人俳優初の男優賞を受賞した、柳楽優弥(32)以来となる男優賞受賞に「『誰も知らない』の時にも授賞式に呼ばれて一体、何の賞だろう? と思っていたら、全く予想していなかった男優賞をいただいて、頭が真っ白になって何を言ったらいいか、分からなくなりましたけど、結果的には、いろいろな意味で、とても良かった」と語り、笑みを浮かべた。

ソン・ガンホにとって、海外の主要な映画祭で初の男優賞受賞となったことも喜んだ。「今回は、やっぱり日韓の合同チームで、主演の役者が男優賞というのは韓国映画界でも男優賞は初なので。ソン・ガンホさんも、国際賞で単独というのは初だと思うので多分、今、韓国国内でも盛り上がっているはずですし。共演した役者たちもスタッフも一番、うれしかったと思う」と口にした。

その上で「彼が、この作品の肝だったし、本当にムードメーカー、チームリーダーだったし、彼がこの形で評価されたのは何よりです」と、ソン・ガンホが「ベイビー・ブローカー」という作品を成立させる上で、欠くべからざる大黒柱だったことを強調した。

取材陣から、良い演技を引き出した秘訣(ひけつ)を聞かれると「良い演技をさせるという感じは全然ない。自分でも分からない」と笑った。その上で「僕も、彼の演技を見ながら脚本を、また現場で直していく。編集を見てもらって…というか、彼が見るので、意見が戻ってきて。そのフィードバックが、撮影の裏で毎日あった。そのことが僕にとって、すごく判断の1つの基準になりましたし」と、ソン・ガンホが撮影中に脚本だけでなく、撮影した映像を見て意見を出すなど、演技以上の深い関わりをしてきた影響が大きかったと説明。「そういう信頼関係の中で進められたことが、作品の中にある彼の芝居の質も上げた、ということだと思います。僕が何か引き出したというよりは、そういう感じだと思います」と、互いの意見交換が映画自体の質も、ソン・ガンホの演技の質も上げたことが、韓国映画史上、初の快挙につながったと指摘した。