俳優水谷豊(69)が監督を務めた映画「太陽とボレロ」(3日公開)で映画デビューを果たす女優森マリア(22)。20年テレビ朝日系連続ドラマ「24 JAPAN」で仲間由紀恵の娘役を演じ、話題となった注目株。主演の檀れい、石丸幹二、町田啓太ら実力派俳優がそろった「太陽とボレロ」の中で、けなげなバイオリン奏者役を好演している。

このほど日刊スポーツの取材に応じ、映画デビューや自身のキャリアについて語った。2回にわたってお届けする。【佐藤成】

<前編>

初出演映画の公開を直後に控えた思いを聞くと、「そわそわです。正直まだ実感はないです」と初々しく答えた。

地方都市のアマチュア交響楽団を舞台にした作品で、檀演じる楽団主宰者・花村理子を中心に、音楽を愛する「普通」の人々が織りなす人間模様を描いたエンターテインメント作。森は、理子の洋装店で働く、楽団最年少のバイオリン奏者・あかり役で出演する。

劇中の演奏は、吹き替えが一切ない。周囲は約1年間の練習期間があったが、森はクランクインの3週間前に、出演が決まったという。「全く前情報がなかったので、? ? ? 私でいいんですかって何回も確認しました。ただ時間がないので驚くよりもまず準備をしなければならないなっていう感じでした」。

バイオリンは5歳から15歳まで「趣味の範囲」で10年間習っていたが、数年のブランクがあった。「毎日やっていないと弾けなくなっていく楽器なので、かなり練習しました。撮影中の2カ月間も含めて、毎日練習しました。1日7時間くらい。監督が『とにかく本物を』っておっしゃっていたので、全部弾けるようにならないと、演奏ができないので一生懸命練習しました」。

あかりは、交響楽団を一番に思い、解散が告げられた楽団が最後1つにまとまるように奔走する。その役柄について「結構似ているかなって思います。水谷監督も『あかりはマリアちゃんそのままで演じてくれていいから』っておっしゃってくれたので、普段の私+音楽への情熱を考えながら演じました」。

映画の現場は勝手がわからず、悩みもあった。「映画の撮影自体が初めてだったので、どんな空気感で皆さんとやっていくのか、役作りもこれであっているのか確信が持てなかった。あかりという役が私…じゃあ私ってなんだろうって悩んじゃいました」。救いの手を差し伸べてくれたのは、経験豊富な水谷監督だった。「とにかく、不安だったり、自信がないことが多かったので、悩みがちだったんですけど、水谷監督が、『もしもこの映画がおもしろくないといわれたら、監督である自分の責任だから、マリアちゃんは自由に楽しんで演じてくれたら、それが一番だから』っていってくださって。悩んだり考えることも大切だけど、前向きにいこうと思いました。水谷監督に導いていただきました」。

監督はスター俳優でもあるが、その距離感の近さに助けられたという。「何でも気軽に相談させていただきましたし、役者だからこそのアドバイス、受け取りやすい特に受け取りやすいなって思いました。寄り添ったアドバイスをしてくださるので。あとは距離感が近かった。一緒にお弁当を食べたり普段のふれあいも作っていだたいた」。

映画作りの魅力も実感した。「水谷組だからこそだと思うんですけど、水谷監督の温かくて優しい空気がチーム全体に広がっていたので、チーム感みたいなのがすごかった。しかもロケ地が(長野)松本の、自然のあるゆったりしたところ。穏やかで笑顔で包まれているのが心地よかったです」。

これからも映画には出演し続けたいと目を輝かせる。「いろんな作品と出会いたいです。コメディーがすごい好きなので、ちょっと変わった女の子の役をやってみたいです。今まで真面目で明るくてっていう役が多かったんですけど、私はそれだけではないので(笑い)。それだけではないところもあると思っているので、ちょっと不思議なところとかも出せていけたらいいな」。

試写などを見た関係者から反響があったのは、夕日が沈む丘の上で、森がソロでバイオリンを演奏する美しいシーンだという。「夕日が沈む一瞬を狙ったシーン。トータル1時間ちょっとの限られた時間で、とにかく集中して音楽を弾くぞって言う気合で挑んでいた。松本を一望できて、夕日の温かい光が包み込まれたときにすごい気持ちよくて。自分の音楽も相まってすごいすてきな空間だった。1時間くらいだったんですけど、永遠に感じるくらい、時が止まったような感じがしました」と当時を振り返った。

最後に作品の見どころを問うと、「水谷監督は、コミカルな演出を至る所にちりばめてくださっているので、楽団員のみんなの日常をみていただきたい。それぞれがいとおしくなるキャラクターで描かれているので、そこがすごい私のイチオシポイントです」と明かした。