松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳らが出演する野田秀樹作、演出のNODA・MAP公演「A Night At The Kabuki」が22日(日本時間23日)、ロンドン・サドラーズウェルズ劇場で開幕した。3日間のチケットは完売。高い期待を超える作品に、満員の約1500人がスタンディングオベーションでたたえた。

英国のロックバンド、QUEENのアルバム「オペラ座の夜」の楽曲を使い、「ロミオとジュリエット」の物語を源平の世に置き換えた作品。悲恋のその後も描かれている。関係者によると現地の観客が7割以上を占めた。演劇の本場の観客たちのスタンディングオベーションに松、上川、広瀬、志尊も感激した。広瀬と志尊は海外公演初となった。終演後の4人と野田のコメントは以下の通り。

 

▽松たか子 ロンドンの初日をあけることができました。なんだろう、、感謝で胸がいっぱいです。舞台上で起こったこと全てがこの芝居を立ち上がらせている、そんな幸せな初日でした。

▽上川隆也  カーテンコールの歓声が、まだ耳朶(じだ)に残っています。確かに客席に目を向ければ、そこにはなじみのない光景が広がっていましたが、白く染められた舞台の上は、光も音もそして目の当たり触れ合い励まし合う面々にも何一つ変わりなく、だからこそ安心して仲間に身を委ね浮き立ちも乱れもしない、いつも通りの『Q』を演じることが出来たのでしょうし、その『いつも通り』が、あの歓声につながったのだと思っています。今後の大きな糧となる、本当に貴重な経験が出来ました。

▽広瀬すず 今まで感じたことないあの高揚感は、夢の中にいるような公演でした。いろんなものが私の中にストレートに届いて、言葉にするのが難しい感覚でした。でも、一生忘れることのない時間でした。最高に楽しかったです! カンパニーみんなのステージ上で合わせた顔が今もフラッシュバックしてます。

▽志尊淳 幕が上がるまで、イギリスで公演をする実感がなく、伝わるんだろうか、どう思われるんだろうかと未知の世界に不安を募らせていました。

ですが、幕が上がった瞬間その不安は吹き飛ばされ、会場の熱気や反応に圧倒され、観客の皆様と一緒に作品を作っている空気を感じることができました。

国、言語、文化が違えど、表現が伝わり、喜怒哀楽感情を共有できるという最高な体験ができました。

あらためて野田さんのすごさを肌で感じたとともに、役者人生においても稀有(けう)なこの体験をかみしめ、残りの公演も楽しみたいと思います。

▽野田秀樹 やすやすと席を立ってまで拍手をしない英国の観客1500人が、ほぼ全員スタンディング、オベーションをしてくれた。その姿を舞台上から目の当たりにして『してやったり!』の感が大いにあります。

演劇の本場ともいうべき英国に、演劇留学してから30年、そして、ロンドンでは20年近く、時々芝居を打ってきましたが、ロンドンでの大劇場公演は、自分でも意外なことに初めてで、新鮮な緊張感がありました。

終演後の観客の多くから『今まで見たことのない衝撃的な芝居だった』と興奮する声、またカーテンコールでたくさんの声が客席から上がるのを聞いて、久しぶりに心震えました。ああ、これが本来の劇場の姿だったよなあ、と。日本の劇場にも、一刻も早く声が出て興奮する姿が戻ってきて欲しい、というか許されるようになってきて欲しい。しみじみ思いました。

 

日本では19年に初演。すぐにロンドン公演計画が持ち上がり、QUEENのギター、ブライアン・メイも期待を寄せてくれたが、コロナ禍で開催が難しくなった経緯がある。24日までの公演は完売という。この後、大阪・新歌舞伎座(10月7~16日)、台北・国家戯劇院(10月25~30日)でも上演される。