今年初めに失語症と診断されて俳優を引退したブルース・ウィリス氏(67)の代理人が、デジタル肖像権をディープフェイク関連会社に売却したとの報道を否定した。英テレグラフ紙が、ディープフェイクを使った自身のデジタルツインが映画や広告に出演する権利を、商業プロジェクトのためにデジタルツインを使用する企業ディープケーキに売却したと報じていた。

これに対して同氏の代理人がハリウッド・レポーター誌に、「ディープケーキとはパートナーシップも契約を結んでいない」と声明を発表した。ウィリス氏は昨年、ディープケーキと契約してデジタルツインがロシアの携帯電話会社の広告に出演していたが、同社も「デジタル肖像権はウィリス本人にのみ帰属しており、それを売却することはできない」と報道を否定している。

同社の公式サイトでは、ウィリス氏のデジタルツインが欧州での広告に使用されと紹介されており、「自分のデジタルツインの精度が気に入っている。時間をさかのぼる絶好の機会です。私が別の場所にいる時でさえ、デジタルツインが仕事をし、撮影に参加することができる。これは非常に新しく、興味深い体験」と本人のコメントも掲載している。

ディープフェイクとは既存の映像に別の人物の顔を合成するAIに基づく画像合成技術で、ウィリス氏のデジタルツインは映画「ダイハード」(1988年)や「フィフス・エレメント」(1997年)などをもとに作られたという。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)