10月に29年ぶりに再結成した4人組ロックバンド、男闘呼組メンバーで俳優の高橋和也(53)の出演映画「追想ジャーニー」(谷健二監督)が11日から池袋シネマ・ロサなどで公開されている。このほど高橋が取材に応じ、作品や男闘呼組再結成への思いを語った。

映画は主演の藤原大祐(たいゆ、19)演じる18歳の高校生、史也が、30年後の自身と共に思い出を追想しながらより良い人生を探る旅に出る物語。高橋はその史也の30年後の姿を演じる。演技を終え「面白かった」と振り返り「脚本を読んだ時点でも史也と(自身が演じた)謎の男のかけ合いがすごく面白かった。実際に演じてみたら、それ以上に深い体験ができました」と語った。

映画では、48歳となった高橋演じる史也が過去をさかのぼり、かつてのクラスメートや交際相手と会って後悔を取り戻そうとするシーンも印象的に映る。高橋は「あんまりうしろを見ない人間なので」と、これまでは自身の人生に後悔を感じたことがなかったと明かし「でも、今回演じてみて自分にも後悔あるなとあらためて気付かされたというか。そんな思いがしましたね」と口にした。

作品には藤原演じる18歳の史也と母親、48歳の史也と娘の関係など、家族との関わり方を考えさせられるシーンもある。高橋も6人の子どもを持つ父親であり「やっぱり特に娘との関係とかね。そこのシーンはすごく自分の人生に重なってしまった」と振り返った。「親だったら誰でもそういう後悔ってあると思うんですけど、何であんなこと言ってしまったんだろうとか。演じながら感情がわき上がってきて、涙が止まらなくなっちゃって」と語り「あと、僕は俳優をしながら家族を顧みないでずっと仕事に没頭してきちゃったから。もっと子どもといてあげればよかったとかね。そういう僕の後悔みたいなものもあって。史也と重なるところがちょっとあったなと思うんですよね。なかなかそこまで自分自身の感情が重なるシーンってないですから。何年に1本とか。俳優にとって、演技をしていて自分の人生に重なるというのはすごい幸せな瞬間なんですよね」。

劇中のキーワードのひとつには「ターニングポイント」が挙げられる。高橋は自身のターニングポイントに長男の誕生を挙げた。93年の男闘呼組活動休止後は米国に渡り、俳優の勉強や、シンガー・ソングライターとして活動していた。「10代から男闘呼組をやって24歳で終わるんですけど、そのあと僕は米国に行ったんですよ。その時に当時の彼女、今の妻のおなかの中に長男が宿った。もしその時、長男がおなかに宿らなかったら、僕は米国にそのままいたと思います。でも、長男が宿ったことで、パパになる。日本に帰らなきゃと。あそこがターニングポイントと言えばそうでしたね」。

あの時、そのまま米国にいたとしたら-。高橋は「全然違う人生でしたでしょうね」としつつ「でも、日本に帰ってきてよかったなと思っているし、今の自分の人生に満足しています」と語った。

そんな子どもたちへの思いも聞いた。「それぞれ大きくなってきて、自立したり結婚したりするようになってきました。ほぼ僕のやってきた仕事って俳優の仕事で、わりと大人向けの作品、番組が多かったので。子どもたちが小さい頃は僕の出ているものはまだ理解できなくて。あんまり見せてあげられなかった」といい「でも今は本当に、長女とか映画好きで、僕の出ていた映画とか過去のものを一生懸命見てくれる」と喜んだ。

長男の耕太郎と三男の海斗はユニット「Tokyo Plastic Boy」として音楽活動も行っている。「2人は僕が作ってきた音楽が好きで、そういう影響を受けてユニットをやっている。僕のDNAがそこに受け継がれていると思うんですよね。そういうのはすごくうれしい」。

子どもたちは自身が男闘呼組として活動していた頃は知らなかった。29年ぶりの再結成がかない、10月のライブで初めて男闘呼組としての姿を見せることができた。「みんなが来てくれて初めて見てね『めちゃくちゃかっこよかった。男闘呼組のファンになった』って言ってくれたのがすごくうれしかった。それがやっぱり誇りかな。『追想ジャーニー』もぜひ子どもたちに見せたいなと思います」と笑顔をみせた。

高橋は活動休止後も何度も男闘呼組の夢を見てきたという。10月のライブでも客席へ向けて喜びを爆発させた。「絶対に起こらない、無理だと思っていましたから。でも、ずっと願っていたことが現実になってものすごく幸せです」と語り「だから精いっぱい全力で4人で駆け抜けようと思っています。よく夢に見たのは、心の底でもう1度みんなとやりたいというのが表れていたんじゃないかなと。当時はそういう状況じゃなかったから絶対無理だと思っていたし、でも今こうして現実になっているのは本当に幸せなことですよね」。

ライブには木村拓哉や佐藤アツヒロ、生田斗真らも駆けつけた。木村らはインスタグラムでライブの感想もつづった。高橋は「みんな彼らは男闘呼組が好きだったからね。後輩たちには好きな子多いから」と語り「彼らだってびっくりしたと思いますよ。まさかもう1回やると思ってなかっただろうし。だから初日に駆けつけてくれたんでしょうね」と話した。

男闘呼組の活動は来年8月までの期間限定。加えて年明けには自身がソロで行っているバンドのレコーディングもある。役者とミュージシャンの両輪で進む今後について「多分、休みはもうないですね」と語り「ずっと8月まで突っ走り続ける感じになると思うから。俳優の仕事は8月まではちょっとできないかもしれないな」。先に見える多忙な日々にも、どこかうれしそうな表情で笑った。【松尾幸之介】