漫画家・荒木飛呂彦氏の大ヒットシリーズ「ジョジョの奇妙な冒険」の、人気スピンオフ作をNHKが20年に実写化し、昨年12月に第3弾が放送されたドラマ「岸辺露伴は動かない」が、映画化されることが4日、分かった。

映画化するのは、荒木氏が2009年(平21)に、フランスのルーブル美術館が国内外の漫画家とコラボした企画「バンド・デシネ」のために描き下ろした初のフルカラーの読み切り作品で、同美術館に日本の漫画家の作品として初めて展示された「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」。第1弾から主演する高橋一生(42)と、5日に25歳の誕生日を迎えた共演の飯豊まりえ、渡辺一貴監督らキャスト、スタッフは続投。現在、パリで撮影中で、公開日は5月26日に決まった。

20年12月に第1期が放送されると、原作を再現するクオリティーの高さが人気を呼び、3年連続で12月に放送され、全8話を数える「岸辺露伴は動かない」が、映画になる。22年12月27日放送の第8話「ジャンケン小僧」の最後で、高橋演じる露伴が「ネタは世界中に転がってる」と口走り、飯豊演じる泉京香が「パリ…ルーブル美術館」と口にしたセリフが年末年始、伏線ではないかとファンの間で臆測を呼び、さらなる続編を望む声が巻き起こった。その“伏線”が放送から約1週間後、映画化という最高の形で回収された格好となった。

物語は、美の殿堂ルーブル美術館を舞台に展開される「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追う。昨秋から始まった日本国内での撮影は終了し、現在はフランス・パリでポン・デ・ザール(芸術橋)、シャンゼリゼ通り、エトワール凱旋(がいせん)門、アレクサンドル3世橋、カルーゼル広場など名所での大規模ロケを敢行。物語の軸となるルーブル美術館での日本映画の撮影は、14年の「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」以来2作目となる。

原作の熱烈なファンでもある高橋は、撮影中のパリから熱いコメントを寄せた。

「岸辺露伴という人間を演じさせていただいてから、3年目に入りました。劇場版や映画版と銘打たない今作においても、岸辺露伴を演じ続けさせていただけていることは、僕の人生にとって非常に特異な出来事です。今はパリの現場でこの情報解禁コメントを書いています。周りにはドラマの第1期から岸辺露伴を作ってきた素晴らしい日本のチームが居ます。そこに日本の映画チーム、加えてここ数日は極めてプロフェッショナルで真摯(しんし)な、これまで第1期2期3期を共に作ってきたかと錯覚するようなフランス現地のチームが合流し、唯一の作品が出来上がっていくのを目の当たりにしています」

「第一期の撮影時、演出の一貴さんと、あくまで夢の話として『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の話をしていました。いつか実際に、パリで撮影が出来たら、と。そして今、パリ市街の石畳の上、露伴として立っている自分に違和感を覚えていないのは、間違いなく、卓越したスタッフワークに支えられているからだと思います。異国においてもこれまでと何も変わらずに露伴でいられることを、心から感謝しています」

「今撮影しているフランスパートだけではなく、既に撮影を終えている日本パートも作品全体の重要な部分を担っています。ジョジョの全作品においても大事な要素である血脈、受け継がれるもの、過去、が今作においても語られます。それらと向き合うことは、今自分が存在していることにつながります。時間は誰にとっても優しくも残酷にもなりますが、例外なく今作の露伴にも、その存在を問いかけてきます」

「今作は実写ドラマである『岸辺露伴は動かない』シリーズと地続きであり、シリーズ9話目とも言える物語になります。これまでドラマシリーズを見てくださった方はもちろん、独立した1つの作品としても、これまでの露伴の足跡をご存じない方にも楽しんでいただける映画作品になっていると思います。劇場に足を運んでくださる皆さんにおかれましては、非常にユニーク(奇妙、特異、唯一)なこの作品を楽しんでいただければと思っています」

飯豊もコメントを発表した。

「『岸辺露伴は動かない』第3期ドラマは放送終了したばかりですが…実は映画の撮影もひそかに進行していました! 今期ドラマのラスト、私のせりふにもありましたが露伴先生がついにルーヴルへ! 私も担当編集として、パリに行けることになりました! 今回も引き続き、すてきないつものチームに支えていただきながら新しいスタッフさんにも加わっていただき、より一層心強く、素晴らしい環境のもと、お芝居をさせていただけていることを心から感謝しています!」

「フランスの現地スタッフさんたちとの撮影では言葉の壁を越えて、大きな規模の作品作りが出来ている幸せをかみ締めていました。忘れられない経験になりそうです。ここまで長く皆さんに楽しみにしていただける作品に、また新しいエピソードが加わることをとてもうれしく思っています! 露伴先生と京香が、遠く離れたルーヴル美術館に隠された謎と、過去に向き合います! ぜひこれまで通り、楽しんでいただけたらと思っています!」

渡辺監督もコメントを発表した。

「映画『暗殺の森』で描かれるパリは退廃的で陰鬱(いんうつ)だ。人々が生を謳歌(おうか)する『花の都』ではなく、死と倒錯のにおいが充満した『黒い街』。3年前にプロジェクトが始まって以来、『岸辺露伴は動かない』の映像ルック、美術設定、扮装(ふんそう)表現は、常にこの映画から有形無形の大きな刺激を受けてきた。撮影で訪れたパリは『暗殺の森』と同様、今にも落ちてきそうな厚くて重い雲に覆われ、いてつく雨が降り続く、美しくも冷たい世界だった。そこに今、岸辺露伴が立っている。既視感と高揚感が入り交じる不思議な感覚。しかし感傷はない。露伴は当たり前のように、そこにいる。いつものように、撮影は始まる」

渡辺監督以下、製作陣も続投する。脚本をアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの脚本も手掛けた小林靖子氏、音楽を菊地成孔氏と、同氏が立ち上げた音楽制作集団「新音楽制作工房」、人物デザイン監修・衣装デザインを柘植伊佐夫氏が、それぞれ担当する。

脚本の小林氏は、これまでのシリーズでは描かれることのなかった、露伴の知られざるルーツが明らかにされる物語を踏まえ、コメントを発表した。

「初めて『岸辺露伴は動かない』を実写化するとお聞きした時、映画になるという想像はカケラもしていませんでした。またシリーズが回を重ねる度に皆で挙げていた原作候補に、この『ルーヴルへ行く』が入ることはありませんでした。そんなダブルでリアリティーのない話が実現します。珍しく露伴自身がフォーカスされた物語です。ぜひ映画館で楽しんでいただければと思います」

解禁されたティザービジュアルには、本編撮影の合間にパリで撮り下ろした写真が使用された。パリの街並みにたたずむ露伴の横顔が切り取られ

「“この世で最も黒く、邪悪な絵”の謎を追い、美の殿堂へー」

という言葉が添えられ、視線の先には一体何が待ち受けているのか、意味深なビジュアルに仕上がった。また、特報映像では冒頭から

「恐ろしいことが起こるかもしれない。」

「ヤバイ...。そしてゾクゾクするッ!」

「なぜルーヴルの地下倉庫に…」

など、謎めいたセリフが押し寄せる。次の取材先がルーヴル美術館に決まったことを告げる露伴と担当編集である泉の場面では、おなじみの掛け合いも健在。ルーヴルを舞台に展開される、見る者を深淵(しんえん)なる世界へといざなう、サスペンスの幕開けを予感させる映像となった。