「1981年に生まれたスローガン『楽しくなければテレビじゃない』。これが我々のDNAにある言葉です」。フジテレビは6日、東京・台場の同社で4月期改編発表会を行った。その会見中に編成制作局長の立松嗣章氏が力強く放った言葉が、強烈に印象に残った。

そのDNAを再び体現すべく、昨年6月に港浩一社長(70)が就任した。「とんねるずのみなさんのおかげです。」の初代総合演出を務めるなどバラエティー畑を歩み、まさに「楽しくなければテレビじゃない」を体現してきた存在だ。社長就任当初から「フジテレビルネサンス」をスローガンに掲げ「明るく楽しく元気なフジテレビ復権の実現」を宣言してきた。

今年の4月改編は「港カラー」が色濃く反映された。立松氏は会見冒頭で「新体制としては実質の第1弾の改編を迎える。意欲作、期待のできるコンテンツがいくつか出ている。4月改編で終わるのではなく、その先の10月改編に含めて、強いタイムテーブルをつくっていければ」と改編の意図を説明した。

昨年10月は港社長が就任したばかりで、午後7~11時のゴールデン・プライム(GP)帯でバラエティー番組の改編を開局以来初めて行わなかった。だが今回は、会社のカルチャーとして40年以上も醸成してきたDNAを武器に巻き返す。

目玉は「日曜午後9時」の激戦区に投入する「まつもtoなかい」。ダウンタウン松本人志(59)とタレント中居正広(50)がバラエティー番組で初タッグを組む。特番からレギュラー化にあたり、音楽、お笑い、ダンス、アートなどあらゆるエンターテインメントを発信する新趣向の”トーク&パフォーマンス番組”として始動する。

個人的に一番注目しているのは、2時間の深夜生放送バラエティーとして4月14日からスタートする「オールナイトフジコ」(金曜深夜0時55分)。MCには元テレビ東京の佐久間宣行氏(47)、オズワルドの伊藤俊介(33)、さらば青春の光の森田哲矢(41)の3人を迎える。港社長は当時、ベースとなった83年4月開始の「オールナイトフジ」のディレクターを務めていた。

「オールナイトフジコ」の総合プロデューサーに就任した作詞家の秋元康氏(64)は、番組を復活させるにあたって、次の言葉を残した。

秋元氏 あの伝説の番組「オールナイトフジ」が帰ってくる。といっても、本当に「オールナイトフジ」の復活は待ち望まれていたのだろうか? いまさら「オールナイトフジ」といっても、そんな40年前の番組、知らねえよという視聴者も多いだろう。それでも、なぜ、「オールナイトフジ」なのか? 今の地上波に必要なものは、あの番組が持っていた熱量だと思うからだ。

自問自答しながらも答えはブレない。ひたすら持論を展開し続けた。

秋元氏 港浩一社長と盟友秋元康はとにかく、金曜日の深夜に2時間の生放送をやってみようと考えた。広報資料として発表できるような企画はまだ、何もない。そこにあるのは、金曜日の深夜に2時間の生放送の枠を作ったということと、地上波の可能性と、出演者や若手クリエイターたちの熱量だけである。

フジテレビが「楽しくなければテレビじゃない」と声高に叫んだ1981年に生まれた筆者は「オールナイトフジ」も「夕やけニャンニャン」も直撃していない。だが、そこには予定調和じゃ作り出せない熱狂があったと想像はつく。だからこそ、秋元氏が言う「熱量」を今、追体験してみたい。立松氏は会見で「視聴率というより話題性。とにかく話題がつくれるコンテンツ、世の中をバズらせるコンテンツとして頑張っていければ」と断言した。この4月からは「楽しい」に全振りしたフジテレビから目が離せない。【高橋洋平】