宝塚歌劇団の専科スター凪七瑠海が26日、星組トップ娘役舞空瞳と組んで主演する全国ツアー星組公演「バレンシアの熱い花」「パッション・ダムール・アゲイン!」を、大阪・梅田芸術劇場でスタートさせた。星組トップ礼真琴は21日からシアター・ドラマシティで主演作「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」に臨んでおり、星組のトップコンビは、それぞれに別れて公演に臨む。

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トップでも、次期トップでもない専科スターが、トップ娘役と組んで全国を回る異例の宝塚歌劇ツアー。16年9月に専科へ移って6年半。03年入団89期生の凪七にとって、全国ツアー初主演となった。

芝居「バレンシアの熱い花」は、故柴田侑宏氏の作で、演出は中村暁氏。「うたかたの恋」「仮面のロマネスク」など、多くの名作を残した柴田氏が76年に月組で初演。07年、16年には宙組で再演された傑作ミュージカルだ。

19世紀初頭のスペインを舞台に、バレンシア地方の領主だった父を殺害された青年が挑む復讐(ふくしゅう)劇を、さまざまな愛の形を織り交ぜて描く。凪七は貴族衣装にマントも羽織り、クラシカルな“宝塚の伝統美”を表現した。

凪七は下級生時代に同芝居に出演しており、今作稽古中には「当時は柴田先生もご存命で、先生のお声がよみがえりました」。この日、初日を無事に終えると「今日も見守ってくださっていると思い、感謝の気持ちを胸に、天国の先生にお届けするつもりで臨みました」とあいさつした。

ショー「パッション・ダムール・アゲイン!」は、ベテランの岡田敬二氏が作・演出。男役の美学を追究するレビュー作で知られる岡田氏が、「ロマンチック・レビュー」シリーズから抜粋した20年宝塚バウホール作の全国ツアー版。凪七をはじめ、星組スターの瀬央ゆりあ、極美慎ら星組スターが、男役の“粋”“美学”を見事に体現した。

終演後のあいさつで、凪七は「たくさんの愛が詰まった岡田先生の作品。先生方、先輩方の思い、そして芸を、きちんと受け継いでいかないといけない」と気を引き締めた。

芝居、ショーともに持ち味の宝塚伝統美、芸を発揮した凪七は、カーテンコールに何度もこたえ、最後は「ほんま、おおきに」「初日あいたで」などと、東京出身ながら「長く暮らしているので」と笑いつつ、関西弁で締めて、客席をわかせた。

ツアーは梅田芸術劇場では29日まで、その後、4月11日の福岡市民会館まで、全国5カ所計23公演を予定している。