フランスで開催中のカンヌ映画祭で、最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された、是枝裕和監督(60)の映画「怪物」(6月2日公開)の公式上映が17日(日本時間18日)行われた。

公式上映前には、シングルマザー麦野早織を演じた安藤サクラ(37)と、沙織の息子・湊役の黒川想矢(13)湊の友人の星川依里役の柊木陽太(11)担任教師の保利道敏役の永山瑛太(40)と脚本を手掛けた坂元裕二氏(56)が、是枝監督とともにレッドカーペットを歩いた。一行は、会場内で大きな拍手で迎えられた。

約2200人の観客が集まったグラン・リュミエールで上映が終了すると、拍手が起こった。その中、がんの闘病中に映画音楽を担当し、3月28日に亡くなった坂本龍一さんへの追悼文が流れると、敬意を表するような歓声も上がり、その後、スタンディングオベーションが9分半続いた。是枝監督は、大きく会場内を見渡して、おじぎをしながら称賛に応えた。両脇の安藤と永山ともハグをし、言葉を交わし、坂元氏ともしっかり肩を組み、多くの観客に届いた手応えを確かめ、喜びを分かち合った。

是枝監督はスタンディングオベーションの後、マイクを渡されると「自分の作品なんですけど、本当に多くのスタッフとキャストに支えられて、作ることができました。まず、キャストとスタッフに感謝します。たくさんのスタッフが今日ここに集まってくれました。そのことが、何よりうれしいです」と感想を語った。そして、胸に手を当てながら「でも、いろいろな事情で、みんなが、ここに集まるわけにはいかなくて。でも、ここに来られないスタッフとキャストの思いも、ここに抱いて今、ここに立っているつもりです」と続けた。最後に「(日本に)戻って、皆さんの、この拍手と、皆さんの顔を、ここに来られなかったチームのみんなに報告したいと思います。とても良いワールドプレミアになりました。本当に、ありがとうございました」とあいさつした。

「怪物」は、是枝監督にとって邦画3作ぶりとなる新作。同映画祭コンペティション部門への出品は、韓国映画に初めて挑戦した22年「ベイビー・ブローカー」に続き、2年連続、7回目の選出(カンヌ国際映画祭への出品自体は9回目)。今作同様、安藤が主演し18年にパルムドールを獲得した邦画としての前作「万引き家族」に続く、5年ぶり2度目の頂点取りを目指す。