東京・明治座「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」の昼の部「不死鳥よ 波濤を越えて-平家物語異聞-」は20日、市川團子が猿之助の代役を務め再開された。

團子は1日だけの稽古で、大陸に渡った平家の武将を堂々と演じた。猿之助より身長が10センチ近く高いため、急きょ猿之助の衣装を直し合計10着ほどを使用した。歌唱シーン、スピード感ある立ち回り、情感あふれる演技で、愛する人との別れの場面や、家臣に「生きて、生きて、生き抜くのだ!」と声をかける場面では、あちこちで目頭を押さえる観客の姿が見られた。

クライマックスでは宙乗りを見せ、大きな拍手を受けた。幕が下り、退場を促すアナウンスが何度も流れたが、10分近く拍手が鳴りやまず、スタンディングオベーションが続いた。

團子は市川中車(香川照之)の長男で、祖父は市川猿翁(3代目猿之助)。「不死鳥よ-」は猿翁が79年に初演した作品で、團子にとって深い縁がある。観客からは「19歳とは思えない演技で感激しました」「(澤瀉屋の)血を感じました」という声も聞かれた。

夜の部「御贔屓繋馬」は、18日から中村隼人が代役を務めている。【小林千穂】