北野武監督(76)6年ぶりの新作映画「首」(今秋公開)が23日(日本時間24日)フランスで開催中のカンヌ映画祭でプレミア上映された。北野監督は、上映前から観客の猛烈な熱気で迎えられ、上映後は強烈なスタンディングオベーションが巻き起こった。上映後は「まぁ…編集や何かやって、ずっと見てたんで。う~ん…寝ちゃうかなと思ったけど、久々、大画面で見たから、まぁまぁかなって感じだね」と、ジョークを交え、笑顔で手応えを口にした。

「首」は北野監督にとって、カンヌ映画祭ある視点部門に出品した1993年(平5)「ソナチネ」と同時期に構想し30年、温めてきた企画で「座頭市」以来20年ぶりに手がけた時代劇。映画化に先立ち、19年12月には自身初の歴史長編小説として原作を書き下ろし出版した。物語は、織田信長が跡目をエサに謀反を起こした家臣の捜索を命じたことをきっかけに明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康ら家臣の欲望と策略が入り乱れた末、本能寺の変まで向かう流れを独自の解釈で描いた。

ビートたけしとして羽柴秀吉を演じた北野監督はタキシード姿で上映に参加。上映後は、同じくタキシード姿の明智光秀役の西島秀俊(52)織田信長役の加瀬亮(48)秀吉の軍師・黒田官兵衛役の浅野忠信(49)秀吉の弟・秀長役の大森南朋(51)そしてはかまを着た、農民の難波茂助役の中村獅童(50)と並んで感慨に浸った。「まぁ、意外に、細かいところが受けていたので、次回作は、これ、お笑い、やんなきゃいけないな、という」と次回作の構想も口にした。その上で「まぁ、今回の映画は、ここにいる…あと、世界にいる役者さんたちが、本当に、よくぞ、やっていただきました、ということで。本当に、お礼しかない。ありがとうございました」と俳優陣に頭を下げた。

北野監督は、カンヌ映画祭と縁が深く「ソナチネ」が93年に、ある視点部門、99年に「菊次郎の夏」、10年に「アウトレイジ」が、それぞれ最高賞パルムドールを争う、コンペティション部門に、それぞれ出品。07年には、同映画祭60回記念映画として製作された、36人の世界的な監督による34本の短編集「それぞれのシネマ」にも「素晴らしき休日」を製作。俳優としても、コンペティション部門に出品された大島渚監督の99年「御法度」に出演し、共演した浅野ともどもレッドカーペットを歩いている。

「首」は世界史、民族、風土、生活習慣、信仰など現代社会を取り巻くテーマを描いた作品を選ぶ「カンヌ・プレミア」部門に出品された。前日22日(同23日)に現地で開いた取材会では「衆道、男色が、普通の庶民の間にまで、はびこっていた。それを戦国の時代劇で、あまり描いていない。そういう人たちの慣習を平気で描くようにして、そういう人たちの中での人間関係が本能寺の変につながっている。裏では語られるけど、表面上、あまり描かないことを意識して映画化した」と、主従関係のある武士同士でなされた衆道や一般社会でも慣習としてあった男色を映画の中で描いたと内容に踏み込んで語っていた。