伊勢谷友介(47)が、若葉竜也(33)の主演映画「ペナルティループ」(荒木伸二監督)に出演し、俳優業に復帰したことが30日、発表された。20年9月に大麻取締法違反(所持)罪に問われ、同12月に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けた伊勢谷にとって、逮捕2日前の20年9月6日に撮影した、21年の映画「いのちの停車場」以来、およそ2年8カ月ぶりの映画への出演となった。撮影は16日にクランクアップしているが、伊勢谷は俳優業に復帰した、同作への出演にあたり「僕は芝居が好きなんだろうか?」などと、自問自答したことを示唆したコメントを発表した。

伊勢谷は劇中で、若葉演じる主人公の青年・岩森淳の最愛の恋人・砂原唯を殺した犯人の溝口登を演じた。大きな喪失感を抱えた岩森が、自らの手で犯人に復讐(ふくしゅう)することを決意し、綿密な計画を立て完璧に実行したはずが、翌朝になると時間は昨日に戻り、溝口も生きており、何度殺しても翌朝は来ない…というタイムループ・サスペンス。

伊勢谷は、殺され続ける役どころを演じ「僕は芝居が好きなんだろうか? 現場で殺されている時も、分からなかった」と率直な感想を明かした。一方で「でも、その予定調和(ループ)から抜け出し始めた瞬間、監督の絶妙な演出を受け感動し、若葉君のこだわりと素直さとの調和が生まれた時、それは動き始めました。キャラクターの気持ちとシンクロし始めます。役者をやる上でそれは全てのことで、僕が芝居を好きな理由そのものです」と、芝居が好きな理由である、役とシンクロした喜びを味わえたと吐露。「ループしている撮影中、監督と話した時、不思議な事を言っていました。『1つの状況で多くの出来事が同時に起きている事が大好きなんだ』と。この作品が編集を経て、監督の特殊な世界観の中で、何が生まれているのか、それが楽しみです」と映画の完成、公開を期待した。

岩森の恋人・唯を山下リオ(30)、謎の男を22年の第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を獲得した「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)にも出演した韓国の俳優ジン・デヨン(41)が演じる。それぞれ、コメントを発表した。

山下リオ 初めて監督にお会いした時、この方の頭の中をのぞいてみたい! とすごく思いました。この映画で描かれているのは、監督の頭の中の世界の、ほんのヒトカケラでしょうが、私が感じた人間への興味を満たしてくれるのでは? と思いました。見えそうで見えない、つかめるようでつかめない、唯という役をかみ砕いていく時間はとても楽しかったです。完成を楽しみにしています。

ジン・デヨン この映画に参加させていただいたことに心から感謝しています。日本の映画に外国人の自分が出演することが邪魔になるのではないかと思い、撮影のない日でも現場で見学させていただきながら映画に染み込むためにハーモニーを壊さず静かに自分の役割を果たすために悩み考えました。監督は丁寧に説明してくださり、私が理解できるのを待ってくださいました。話を聞いていただけるだけでも自信を持つことができとても心強くありがたかったです。脚本、現場が良ければ良い作品になるのは間違いない! 誰よりもこの映画の公開を待っています!

「ペナルティループ」は、20年に「人数の町」が国内外で評価された、荒木伸二監督がオリジナル脚本で描く最新作で完成は今秋、公開は24年3月を予定している。

◆伊勢谷友介(いせや・ゆうすけ)1976年(昭51)5月29日、東京都生まれ。東京芸大美術学部在学中の96年にモデルとして芸能界入り。98年に映画「ワンダフルライフ」で俳優デビュー。98年にニューヨーク大(映画コース)に短期留学。99年に映画「金髪の草原」で初主演。10年「あしたのジョー」で第35回日本アカデミー賞・優秀助演男優賞をはじめ数々の賞に輝く。04年「CASSHERN」06年「雪に願うこと」11年「カイジ2 人生奪回ゲーム」19年「翔んで埼玉」21年「るろうに剣心 最終章 The Final」などに出演。