12歳で俳優デビューして、今年で芸能生活76年目のタレント毒蝮三太夫(87)が文春新書「70歳からの人生相談」を出版した。テレビ、ラジオでお年寄りをいじって「ジジイ、ババアは俺の伝統芸能。他のやつがやったらクビになる」という毒蝮に、その腹の中を聞いてみた。【小谷野俊哉】

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「今ね、88キロくらいあるかな。身長は縮んで、1メートル64センチくらいかな。プロフィルとは、随分違う(笑い)。88キロだと多いでしょ。だから85キロくらいにしようかなとは思っている。それで、適当にうまいものを食えて、バランスよく生活できればね。自分で運転して、ドライブに行ってるの。この間、免許を更新したら、今度更新する時は90歳だと。でも、迷惑が懸からないうちはやってみようと思っている。それも、1つの健康法じゃないかなと。こうやってしゃべることもね。家にいる時はへ、缶ビールの350ミリリットルのを1本くらいだから。外だと日本酒でもワインでも、出るものは何でも飲みます。あとは書評を見て本を読む。古い映画も見るよね。時代劇も洋画もSFも見るけど、新しい今の映画は見ないね。リメーク、リマスターの日本の時代劇はいいね。片岡千恵蔵、大河内伝次郎はいいよね。今の作品は、やっぱり見ないな。同級生とかで同じ芸能界のやつもいるけど、ほとんどリタイアしてるやつが多い」

近頃ブームになっているサウナにも入っている。

「気を付けてるよ。熱いところじゃなくて、ぬるい下の方に座って、12分を3回。あんまり冷たい水風呂には入らない。あとはね、なるべく動くようにはしてるけど、要するにムキムキの人間にはなりたくない。敬老の日に、よくマラソンをやっている人とかムキムキのお年寄りを特集しているけど、あんまりやりすぎたいとは思わない」

年を取っても、あくまでも自然体。若い頃から明るく、楽しい芸風は変わらない。

「よく街で俺に会いに来てくれるおじいさん、おばあさんがいる。昔と違って、一緒に写真を撮ってと言われることも多くなったけど、OKだよ。一番の健康の秘訣(ひけつ)はね、うちのかみさんが一度も、仕事について、いい役をやんなさいとか、たくさんお金取る仕事やんなさいって言ったことがないことだよ。1つ年上なんだけど、今もね早く仕事を辞めろってね(笑い)。もっと仕事しろとか、金持って来いって言われたら、精神的にまいるよね。だから若いサラリーマンの人が『あんた、課長なんないの』『店長になんないの』って、奥さんに言われたらつらいと思うんだよね」

俳優石井伊吉から、毒蝮三太夫に改名して、テレビ、ラジオで毒舌をはいて笑わせ、ファンを元気づけてきた。

「役者だって、あんたどうしてこんないつも捕まる役で、いい人の役やらないのって言われたら、やだよね。だって、自分で選んでやるんじゃないんだから。ルールがあるんだから。相手から来る役をやるわけだからね。選べないわけじゃん。そういう仕事なのに、言われたらつらいと思うよ。だから、かみさんに感謝だね。あれこれ言わずに、好きにさせてくれたんだから」

(続く)

◆毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)1936年(昭11)3月31日、東京生まれ。48年に本名の石井伊吉(いよし)で舞台「鐘の鳴る丘」で俳優デビュー。51年「青い真珠」で映画デビュー。57年日本テレビ系「坊ちゃん」でドラマデビュー。59年日大芸術学部映画学科卒業。66~67年TBS系「ウルトラマン」で科学特捜隊のアラシ隊員。67~68年同「ウルトラセブン」でウルトラ警備隊のフルハシ隊員。68年日本テレビ「笑点」出演中に立川談志の助言で本名から芸名を毒蝮談三太夫に改名。69年TBSラジオ「ミュージックプレゼント」スタート。170センチ。78キロ。血液型O。